社長人事が示す「生損保一体」

「生損保一体」を親しみやすい手法でアピール
「生損保一体」を親しみやすい手法でアピール

 今年1月、東京海上が発表したトップ人事は生保への注力姿勢を内外に示す象徴となった。東京海上グループでは、これまで持ち株会社と主要子会社である東京海上日動火災保険の社長を一人で兼務するのが、グループ発足以来の常だった。4月からは永野氏が持ち株会社社長のまま、東京海上日動では会長に就任。後任として北沢利文副社長を昇格させた。

 北沢氏は東京海上HDの子会社である東京海上日動あんしん生命保険に6年近く出向し、同社長も務めた異色の経歴を持つ。あんしん生命の社長職はこれまで「上がりポスト」と見なされており、北沢氏自身も「まさか自分が選ばれるとは思わなかった」と振り返る。

あんしん生命は生存保障の手厚い保険で個人客を開拓する(東海日動パートナーズTOKIO新宿支店)(写真=北山 宏一)
あんしん生命は生存保障の手厚い保険で個人客を開拓する(東海日動パートナーズTOKIO新宿支店)(写真=北山 宏一)

 東京海上にとって生保市場の開拓は急務だが、国内には40以上の生保会社がひしめく。後発組のあんしん生命は個人契約件数が約500万件(2014年度末時点)で業界10位程度。約2400万件の契約を持つ日本生命保険や同約2300万件の米アメリカンファミリー生命保険(アフラック)などの大手と同じ舞台で勝負しても勝ち目は薄い。

 そこで、国内大手が強い死亡保険と、海外大手が強い医療保険の間にある「生存保障」分野に力を入れる。要介護になった場合や働くことができなくなった場合などへの保障を手厚くし、それまで事実上の「空白領域」となっていた分野に打って出た。

 「元気でいた分だけ契約者が得をする」仕組みにも着目。2013年1月に発売した医療保険「メディカルKit R」は「所定の年齢になると使わなかった保険料がすべて返ってくる」という今までにない商品性が話題を呼び、発売開始から2015年末までに約53万件の契約を獲得するヒット商品となった。最大の販売チャネルである損保代理店を通じた生保の販売を強化するため、生損保で分かれていた代理店の支援担当者も一本化した。

 業法で損保と生保に分かれてはいるが、顧客目線で考えればどちらも保険という意味では同じ。ただ、損保発祥の東京海上は、どこか生保を縁遠いものと考える癖があったという。社内に染み付いた序列や慣習を打ち壊す──。成長株のあんしん生命をこれまで以上に重視し、生損保一体の経営方針を内外に打ち出すための施策が北沢氏の起用だった。  東京海上の世界における立ち位置は「14~15番目程度」(永野社長)。合従連衡を繰り返して巨大化した欧米勢は言うまでもなく、国内の大手保険会社も続々と数千億円単位の海外M&Aに踏み切るなど、生損保の垣根を越えた競争が世界中で激化している。

 東京海上は約10年をかけて「M&Aを成功させる手法」を模索し、着実に実行してきた。買収案件の大型化など、ステップアップを続ける“ガリバー”が示す次の一歩に、世界中の保険会社の注目が集まる。