専用スタジオを世界に8カ所

 収益面にも目を向けなくてはならない。同社は広告収入を主な収益源としているが、動画投稿者への収益分配など支出も大きい。グーグルはユーチューブ事業の売上高や利益などの財務情報を明らかにしていないが、今も業績面では苦戦しているようだ。「利益は出ているのか」という質問に対しウォジスキCEOは「答えられない」と前置きしたうえで、「言えることは、今は成長期だということ。プラットフォームを大きくするための投資をしている段階」と強調する。

 新たな億単位のユーザー獲得や利用者の選択肢拡大だけでなく、収益面で苦戦していることも、グーグルがユーチューブの有料化に踏み切った理由と言えそうだ。そしてこれが、3つ目のターニングポイントとなる。

 昨年10月、米国で先行して有料サービス「YouTube Red(ユーチューブレッド)」を始めた。2016年内には日本や欧州そして豪州など米国外でも、ユーチューブレッドを始める計画だ。

 価格は月額9.99ドル(日本円で約1100円)。広告を非表示にできるほか、スマートフォンやタブレットに事前に動画を一時保存して、ネットにつなげていないオフライン状態でも動画を視聴できる。若年ユーザーから要望の多かった「バックグラウンド再生」にも対応した。動画の音楽を聞きながら、メールやブラウザーの閲覧などができるようになる。

 課題は多い。ユーチューブの利用者は10億人いても、大半は無料サービスに慣れている。そのうちの何%が有料サービスに移行するかは未知数だ。

 一定額の料金を支払えばいつでも好きな時にコンテンツを視聴できるビデオ・オン・デマンド(VOD)市場は競合がひしめいている。世界では米ネットフリックスや米フールーのほか、米アマゾン・ドット・コムなどネット業界からの参入も相次ぐ。日本ではNTTドコモなどが配信する「dTV」が国内最多の約470万人超の会員を持つ。

競合がひしめく有料動画市場
●定額制のビデオ・オン・デマンド・サービスの比較
名前(サービス開始時期、利用料) 概要
2015年から、月額9.99ドル バックグラウンド再生、オフライン再生、広告を非表示、独自コンテンツの配信
「Netflix(ネットフリックス)」

1998年から、月額650円~(税別)

10万種類、計4200万枚のDVDをオンライン上でレンタル。独占配信、オリジナル配信作品も保有しており加入者は全世界で7500万人。日本は2015年から
Amazon「プライム・ビデオ」

2011年から、年額3900円(税込み)

音楽聞き放題や当日配達などの特典も併せて提供。調査会社によると会員数は5400万人。日本は2015年から
hulu(フールー)

2008年から、月額933円(税別)

日本では約1万作品以上が見放題。全世界の会員数は約900万人、日本では120万人超。日本は2011年から
NTTドコモなど「dTV」

2015年から、 月額500円(税別)

約12万作品以上が見放題。会員数は約470万人で、ビデオ・オン・デマンド・サービスでは国内最大手
注:YouTube Redの価格、開始時期は米国

 ユーチューブが有料サービスの目玉と位置付けているのが、無料版では視聴できない独自コンテンツの配信だ。ハリウッドや民放テレビ局などと提携し映画や番組なども作成するが、同様のことは既に他社も手掛けている。同社ならではの強みと言えば、世界中にあまたいるユーチューバーだ。

 現在ユーチューブでは、有料版向けの独自コンテンツの作成も視野に、ユーチューバーの動画の質を高めるための支援サービスを強化している。それを実現する拠点が「YouTube Space(ユーチューブスペース)」と呼ばれる施設。世界8カ所にあり、日本にはグーグルジャパン(東京都港区)の本社、六本木ヒルズ内にある。

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