会社を変えた3つの分岐点

 10年間のユーチューブの歴史を振り返ると、大きく分けて3つのターニングポイントがある。

 1つ目は、グーグルによる2006年の買収だ。まだ知名度が低かったベンチャー企業へ約1800億円を投じることに、当時は「高い買い物」との批判が多かった。そんな声を尻目に、ユーチューブはグーグルの資金支援を受けながら規模を拡大し続けた。

 2つ目は、動画投稿者へ広告収入を分配したこと。ユーチューブではそれまで、一部の人気動画投稿者に限って広告収益を分配していた。2012年からは一定の再生回数を超える動画を投稿した人なら誰でも、広告収入の一部を受け取れるようにルールを改めた。

動画投稿者に広告収入を分配してから急増
●動画アップロード時間の推移
動画投稿者に広告収入を分配してから急増<br/>●動画アップロード時間の推移
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 この変更で、動画投稿者が爆発的に増えた。その結果、化粧品のレビューや英会話レッスン、料理、ゲームの実況、曲のカバーなど、自分の特技を生かした動画を撮影して投稿する素人が増え、広告収入で稼ぐプロの「ユーチューバー」の誕生につながった。米国では、10代で年に5000万円の広告収入を得る人気ユーチューバーもいる。

 ユーチューブが人気を集めた背景には、若者を中心としたテレビ離れがある。企業にとっては、テレビ広告に比べ安価で、よりターゲットを絞った広告が打てるメリットがある。そのためユーチューブやフェイスブックなどのネット上へ、動画広告の出稿を増やす動きが広がっている。

 ユーチューブに舞い込む動画が爆発的に増えたことで、弊害も出てきた。例えば、投稿されたコンテンツの管理。「これまでに本当にたくさんの動画を削除してきた。恐らく…何千万本にも及ぶ」。ウォジスキCEOはこう明かす。

 ユーチューブには現在、400時間以上に相当する動画が毎分アップロードされるという。その中にはユーチューブのガイドラインに沿わない動画もある。具体的には、アダルトコンテンツや暴力的なビデオ、ヘイトスピーチなどだ。中東の過激派「イスラム国(IS)」は影響力と発信力のあるユーチューブのプラットフォームを逆手にとり、殺害予告や暴力的なシーンなどの動画配信を続けている。

 ユーチューブでは専門のチームがこうした違法動画を削除している。視聴者が「違法コンテンツ」として報告してくるケースがほとんどだ。しかし、その膨大さゆえにイタチごっこは続いている。

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