米グーグルによる買収から10年。動画配信サイト「ユーチューブ」が大きな賭けに出る。今年中にも日本や欧州そして豪州などで有料サービスを始める。有料化は収益力を上げるメリットもある一方で、広告収入が減りかねないリスクもはらむ。

2005年、ユーチューブで配信されていた1本の動画に、米グーグル幹部の目はくぎ付けになった。中国人の学生が、英国の人気アイドルグループの曲を歌っている動画だった。
「世界中の誰でもコンテンツを発信できて、それを誰もが視聴できる。これが、エンターテインメントの新たな形になるはずだ」。そう直感したグーグルは翌年、ユーチューブを16億5000万ドル(約1800億円)で買収した。当時の売り上げが約100億ドル強だったグーグルにとって、ユーチューブの買収は大きな賭けだった。
それから10年。ユーチューブは、グーグルの想定をはるかに上回る規模に成長した。対応する言語は76に上り、配信地域は世界88カ国を超す。今や全世界で10億人以上が視聴する世界最大の動画配信プラットフォームだ。
創業から11年、グーグルの傘下に入って10年がたつ今年。無料という強みを生かし利用者を増やし続けてきたユーチューブは、有料サービスを世界で開始する。有料動画市場は競合がひしめくが、ユーチューブにどんな勝算があるのか。

米カリフォルニア州サンブルーノ。ユーチューブの本社オフィスは、現在も創業当時の地にある。米ペイパル社員だった3人の青年が立ち上げた当時と比べると従業員は数百倍に増え、オフィスも計3棟に増えた。それでも敷地内には、今もシリコンバレーのベンチャー企業独特の活気が満ちあふれている。
「過去3年間、ユーチューブの視聴時間は年50%以上の成長を続けている。次に考えることは、新たな10億人ユーザーの獲得だ」
グーグルに16番目の社員として入社し、2014年からユーチューブ事業のCEO(最高経営責任者)を務めるスーザン・ウォジスキ氏はこう語る。私生活でも5人の子供を抱え多忙を極める彼女が、米国のメディア以外に露出することはこれまでほとんどなかった。次の10年に向けたユーチューブの戦略を世界に発信するため、今回、米国外の経済メディアの取材を受けた。
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