子機を持つ人が必ず見つかる

 子機は20gと軽量で、最大3カ月間にわたり充電が不要。電波の届く距離は町中で200~1000m、障害物の無い場所なら最大約5000mにまで広がる。外出時の持ち歩きに適している。

 携帯電話のGPS(全地球測位システム)を使う支援施設もあるが、構造が複雑なターミナル駅や地下街、ショッピングセンターなどでは、GPSの位置情報と実際にいる場所にわずかな誤差が出ただけで、壁などにさえぎられ対象者の発見が難しくなる。

 一方、ヒトココは構造が複雑な場所であっても「子機の持ち主を必ず発見できる」(オーセンティックの久我一総社長)という。

 どういうことなのか。親機と子機の間に壁があるとしよう。子機からの電波は、壁が途切れる部分を迂回して親機に届くことになる。親機は壁が途切れる場所を指し示し、表示距離も子機までの直線距離より長くなってしまう。しかし、親機の指示に従って進んでいれば、壁が途切れる場所に到達した時点で正しい距離と方向を示す。つまり電波という見えない糸をたぐっていくことにより、子機を発見することができるのだ。

 オーセンティックは11年、パナソニックの企画部門の元社員や無線機器の元技術者らが設立。ヒトココ発売から約3年たち、16年11月期のユーザー数は6000人を超えた。

 当初、オーセンティックはヒトココを障害者や高齢者、子どもの見守り機器として販売してきた。昨年からは、アウトドア用品専門店の好日山荘(神戸市)の元役員を迎え入れ、登山者向け市場の開拓を加速させている。

 既に北海道や長野県など6道県の警察、東京消防庁のハイパーレスキューなどが、遭難者の捜索や二次遭難の防止のためにヒトココを利用している。

 「日本の山岳エリアの半分ほどは携帯電話のGPSが使えない。無線通信機が使えても、遭難者が居場所をうまく伝えられないケースも多い」。日本山岳ガイド協会の磯野剛太理事長はこう指摘する。遭難者の生存率が高い「黄金の72時間」の間に救助するためには「(あらかじめ警察に提出する)登山届とヒトココを組み合わせるのが最も合理的だ」という。

登山者向けの市場を開拓したことでユーザー数が急増している
●ヒトココのユーザー数
登山者向けの市場を開拓したことでユーザー数が急増している<br /> ●ヒトココのユーザー数

 オーセンティックは販売手法も転換している。これまで子機を1万円程度、親機を2万円程度で販売するか、介護機器リース会社へ卸していた。だが昨年、年会費3650円で登山者に子機を貸し出すサービス「ココヘリ」を開始。1日当たり10円と安価で注目されている。「手応えは大きい。17年11月期のヒトココユーザー数は前期比約2.5倍の1万6000人、売上高は約5倍の1億5000万円を目指す」(久我社長)

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