きっかけは新潟県中越地震

 ボローニャFCは京都の祇園にあった有名なデニッシュパンの販売店の経営権を引き継ぎ、2001年に設立された。現在も売り上げの大半をデニッシュパン関連が占めている。

 ここ数年はデニッシュパンの店舗数を減らし、注文を受けてから配送する直販モデルへ転換しようとしている。並行して注力するのが缶詰パン事業。缶詰パンの売り上げは前年比20%増で推移しており、売上高に占める割合は2015年9月期で16%となった。今年度は20%に届きそうな勢いだ。

 ボローニャFCが缶詰パンを扱うようになったきっかけは2004年の新潟県中越地震だった。地震の被害は大きく、10万人を超える避難者が出た。松尾氏が何か支援できないかと考えていたところに、自衛隊から「長期保存できるパンが作れないか」と相談されたことが始まりだった。

「缶詰パンのおいしさを今後も追求する」と語る松尾豊代表取締役(写真=北山 宏一)

 缶詰パンの開発は困難を極めた。パン作りに関しては専門家がそろう同社だが、長期保存が可能なパンや缶詰を扱ったことはなかった。

 松尾氏は思案の末に、新潟県新発田市の庭山綜合食品に協力を要請。同社はボローニャFCのパン工場の一つで、パンとは別にお総菜のレトルト食品も製造していたからだ。それでも3年保存できるパンの缶詰は作ったことがなく、「無理だと思った」(同社の庭山康夫社長)。しかし松尾氏の熱意に押され、2社による開発が始まった。

 開発では次々と課題に直面した。まずパンの「形」。デニッシュパンの生地は柔らかいため、缶詰にちょうどいいサイズで入るように焼くことが難しい。極端に小さくなったり、缶詰のサイズをはみ出る直径になったりした。

 形を整えるために缶と同じ大きさのパンの焼き型を用意したが、焼き窯の熱が型に反射してパンに伝わらず、内側のパンが生焼けになった。試行錯誤の上、型の外側に焼きを入れて黒くすることで解決したものの、今度は「味」の問題が発生した。

 長期保存に必要な殺菌のために圧力と熱を加えると、「缶を開けて食べたらパサパサで、まずかった」(松尾氏)。パンの水分が失われ、固くなってしまうのだ。しっとり感を出すために水分を増やせば、今度はカビが発生するなど腐敗しやすくなる。そこで行きついたのが、「詳しくは言えないが、ある油脂を少量入れること」(松尾氏)。

 さらに、保存期間を延ばすためには缶の改良も必要だった。殺菌処理を施しても、従来の方法では時間とともに菌が増えるケースが目立ったのだ。フタを閉める際に微細な隙間が生まれ、そこから入った酸素とパンが接することがその原因。脱酸素剤を入れても、効果を3年間も持続させることは難しい。

 そこで製缶会社と相談し、缶詰の内側の樹脂のコーティングを二重にして厚みを持たせる特別な構造を採用した。閉めたフタが缶詰のふち部分にある樹脂に食い込む形になり、隙間ができにくくなる。

 結局、開発を始めてから販売開始まで、3年の月日を費やした。