査定価格の透明性は守る

 それでも、IDOMは小売り強化に大きくかじを切った。当時の決断について、由宇介社長は「設立から10年が経過し、元気なベンチャー企業から、永続的に成長する企業への脱皮を迫られた」と振り返る。

 もちろん、小売り参入で買い取り価格の信頼性や透明性が失われては本末転倒。そこで本部で一括査定する方法は堅持した。査定額もあくまでオークションに出した場合の想定落札価格を基準とし、在庫リスクや展示コストを査定価格に反映することは禁じた。

 また、展示期間が延びて車両価格が下落するのを抑えるため、2週間で売れなかった車両は原則としてすべてオークションに出すというルールを決めた。たとえ現場の営業担当者が「あと1週間お店に置いておけば売れるかも」と惜しんでも、容赦なく手放させた。

 小売事業に参入しながら、根っこのビジネスモデルは変えなかったということだ。由宇介社長は「これまでは買い取った車両を在庫置き場で眠らせていた。それを小売店に展示するようにしただけ」と強調する。

 結果はどうか。いまのところ、生みの苦しみにもがいているのが実情だ。

 連結売上高こそ16年2月期に2100億円と、直近のピークだった08年2月期を初めて上回った。17年2月期も2515億円と過去最高を更新した。

 一方で営業利益は伸び悩む。17年2月期の実績は46億円と、00年代半ばに記録した100億円という水準には遠く及ばない。「小売店舗のシェア向上戦略は着実に成果を上げているが、コスト負担の増加への対応が後手に回っている」(大和証券の古島次郎アナリスト)。IDOMは営業利益について「小売台数が増えれば、20年2月期には210億円を達成できる」とそろばんを弾く。まさに、いまが正念場という局面だ。

中古車市場の縮小にどう挑む
●IDOMの連結売上高と、中古車市場の推移
注:IDOM業績は3月~翌年2月。国内中古車登録台数は4月~翌年3月

 しかし、IDOMにはさらなる逆風が吹く。小売事業がいずれ軌道に乗るとしても、中古車流通市場は縮み続けている。軽自動車を除いた中古車登録台数は15年度に約373万台。これはピークを迎えた1996年より200万台以上も少ない。新車販売は低落傾向にあり、車両の平均保有年数も延びている。今後も中古車市場の拡大は見込めない。

 そもそも「クルマを所有する」という常識自体が、消費財を消費者同士で共有するシェアリングエコノミーの台頭で揺らぎ始めている。

 「自分が言うのもなんですけど、クルマほど無駄な買い物はない」。由宇介社長は率直に語る。「僕はクルマ通勤ですが、会社にいる間、僕の愛車は会社の駐車場で眠っているわけですよね」と由宇介社長。「もちろんその間、自宅の駐車場だって空っぽになる」