晩婚化という社会的な課題を解決するため、常設型の「街コン」を実現した。安心して楽しめる手厚いサービスのほか、スマートフォンの活用など工夫を凝らす。

安心できる利用ルール
安心できる利用ルール
「信頼がリピーター獲得には不可欠」と話す横山淳司社長。「酒の強要はしない」など10項目のルールも定められている(写真=稲垣 純也)

 東京・渋谷。多くの飲食店が軒を連ねる中、ひときわにぎわう居酒屋がある。“婚活応援酒場”を掲げる「相席屋」の渋谷南口店だ。午後9時頃ともなると若者らが行列を作り、来店客が途切れることはない。

 運営するのはセクションエイト(東京都品川区)。2014年3月から相席屋の出店を始め、わずか2年で75店まで増加した。東京の都心部だけでなく地方都市まで店舗網は広がり、外食業界で注目を集める存在となっている。

 相席屋は男性と女性がそれぞれ、2人組や3人組で来店する。入店すると男女の人数バランスを見ながら、店員が男性と女性の組をマッチングする形で文字通り「相席」をセッティングする。その後は会話を楽しみながら、飲食を共にできる仕組みだ。

急速に店舗網を広げている
●相席屋の店舗数推移
急速に店舗網を広げている<br />●相席屋の店舗数推移

男性は10分500円、女性は…

 店内では食べ放題・飲み放題でいずれもセルフサービス。男性は最初の30分が1500円(平日、税別)、その後は10分ごとに500円(同)かかる。一方女性は時間無制限で、一部のメニューを除き無料で利用できる。女性に優しいシステムだが、通常の「合コン」などで男性が多めに払う風潮を考えると納得する人も多そうだ。

 好みの異性と意気投合すれば、連絡先を交換したり2次会に行ったりとその後の行動は自由。片方の組が先に店を出た場合は、残った組には別の相席がセッティングされる。ただ、男性がお金を払って女性を指名したり、一定時間ごとに人が入れ替わったりすることはない。好みの相手と巡り合えるかは、運や相性に左右される。

 男女は原則初めての顔合わせとなるため、「お酒の強要はしない」「失礼なことを言わない、聞かない」といった10項目のルールも目立つ場所に表示する。トラブルが発生しないよう店員も常に気を配り、安心して利用できる体制を整えているという。

 横山淳司社長が外食事業を始めたのは2006年。外食業を手掛けていた父親の影響で自らも起業を目指し、修業を積んで独立した。第1弾として若い女性店員を集めた居酒屋「はなこ」を展開。ユニークな接客が話題を集めてすぐに30店舗を超えたが、類似店が増えたことで競争が激化した。顧客の細かいニーズを掘り起こせず、「結果的に飽きられてしまった」(横山社長)。今年4月には、はなこ全店を閉店した。

 こうした反省を経て横山社長が着目したのが「街コン」だった。横山社長は「多くの人が集って消費が生まれる仕組みはすごいと思った」と振り返る。

 ただ、街コンは開催日程が限られるため、誰でも参加できるわけではない。そこで、日常的に男女が集まり利用できる、居酒屋の業態で展開しようと考案されたのが相席屋だった。

 同社の強みは、日々の仮説検証に基づいてサービス内容や店舗のレイアウトを頻繁に改善すること。例えば席の仕切りは、立っているときは他の席も見えるが座ると見えない高さにして、周囲を気にせず相席した相手との会話を楽しめる。飲み物をセルフサービスにしたのも、店側のコスト削減というよりは、来店客が席を立って少し息抜きができるようにとの配慮からだ。

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