クルマを「止めない」

 毎週金曜日午後2時、タイムズカープラスのエリア担当マネジャー7人が有楽町本社の会議室に一堂に会する。「KPI会議」と呼ばれるこの会議を取り仕切るのは事業部長の内津基治氏だ。KPIとは、重要な評価指標となる数字のこと。内津氏が挙げるKPIは、稼働件数、1台当たりの利用時間、1人当たりの金額の3つだ。KPI会議では、この数字を中心に、各エリアマネジャーが数字を上げるための施策や前週に打った施策の効果を発表する。

 例えば、配備する車種やカラーのチューニングは日常茶飯事。ある首都圏の駐車場で、紫色のクルマが一切稼働していなかったときには、すぐに灰色のクルマに変更。次の週以降、稼働率が一気に跳ね上がった。周囲の駐車場の稼働データから確信はあった。法人の利用が多く、白やグレーといったクルマが多く利用される傾向があったのだ。車種や色は稼働率に響く重要な指標。特に平日・休日、個人・法人、昼・夜これらの6つの要素のどの組み合わせでクルマが動いているのかをつぶさに観察し、「適車適所」を行う。

 「上げる数字」だけでなく、「下げる数字」についても検証を行う。代表例が「不稼働率」だ。クルマが「動けない」時間が長くなればなるほど、売り上げは減る。事故などでクルマが「動けない」状態をいかに減らすかが重要だ。

 不稼働になる最も大きな理由は事故。事故が起きる前の対策、起きた後の対応、この2つの効率をいかに上げるかが焦点となる。例えば、事故を未然に防ぐための点検作業。パークロックやクルマから自動で上がってくる「異常値」のデータを常にグループ会社のタイムズサービスが監視している。月に数回の定期点検以外に、異常値が出た駐車場やクルマは、エンジニアが現地に行きチェックする。タイムズサービス横浜支店の池田紘生氏は、「不稼働になってしまう前にいかに“小さな異常”やその兆候を検知し、対応できるかで不稼働率が大きく変わる」と話す。

「僕らはどこまでいっても駐車場屋。駐車場をいかに便利に使ってもらえるか、そこに寄与できること以外はやらない」と西川社長は話す(写真:的野 弘路)
「僕らはどこまでいっても駐車場屋。駐車場をいかに便利に使ってもらえるか、そこに寄与できること以外はやらない」と西川社長は話す(写真:的野 弘路)

 事故が起きてしまったあとの対応はどうか。事故の種類をデータ分析してみると、「大けが」と「かすり傷」に大別できると判明した。そこから、事故が起きた際、わざわざ修理工場に運ぶ必要のない小さな事故については、現場にエンジニアが1人駆けつけて修理を行うように工程を変更。1人のエンジニアがこなす修理は1日数十件に上る。修理工場に納品するとそれだけで数日クルマを稼働することができなくなるが、エンジニアが出向いて修理をすることで数時間以内に再度稼働ができるようになった。

 使うデータは、自動で取得できるデータにとどまらない。コールセンターから上がってくる「顧客の声」も重要なデータだ。駐車場もカーシェアリングも無人サービス。顧客の生の声を聞けるチャンスはコールセンターにしかない。顧客の声は、1200種類に分類して、傾向を分析する。例えば、返却後に忘れ物に気付くケースがあとを絶たず、そのたびにオペレーターが遠隔でカギを開錠するケースが多発していた。それに対し、2015年4月には、返却後1度だけドアを利用者自身で開錠できるよう変更した。入電率は「下げる数字」の筆頭格。2012年以降、入電率を4割以上減らした。

 毎週のKPI会議でコツコツ積み上げたPDCA(計画、実行、評価、改善)の結果は、数字に表れ始めている。クルマ1台当たりのコストは現在、1カ月9万3000円。一方、1台当たりの売り上げは9万9000円だ。サービス開始から1台当たりのコストを約2割下げ、売り上げを7割伸ばした。

「やるべきことはまだある」

 データは、数字自体では何も生み出さない。データを生かせるのはほかならぬ「人」だ。TCPでは、サービス改善策を練る事業部のみならず、エンジニアやコールセンターもPDCAサイクルを回す一端を担う。佐々木賢一取締役は、「修理やコールセンターをアウトソーシングせず、自分たちでやってみて、失敗をしてみて、修正する“自前主義”が我々の強み」と断言する。

 パーク24がジャスダック市場に上場した1997年。「周囲からはリスクだらけの会社と揶揄された。バブルがはじけた不良債権でうまくいっているだけだろう、と。3Kの代表とまで言う人もいた」と西川社長は振り返る。それが今や駐車場のみならず、日本のクルマ文化の台風の目となろうとしている。

 当然、課題もある。駐車場の解約リスクだ。オーナーの意向が変わり、そこにビルが建てば駐車場は消え、TCPのサービスは提供できなくなる。カーシェアリングは「近くにあるから使う」もの。近くから駐車場が消えればあっという間に利用者が減るリスクがある。最も簡単な解決策は自前の土地を駐車場にすることだが、パーク24はそこには手を出さない。それでも西川社長は、「やるべきことはまだまだある。考えられることをすべてやれば結果はついてくる」と自信を見せる。

(日経ビジネス2015年9月7日号より転載)

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