パーク24は、1971年に初代社長の西川清氏が創業したニシカワ商会から85年に会社分離する形で駐車場経営を開始。西川氏は、それまで月決め駐車場しかなかった市場に、パークロックという自動駐車装置を用いた24時間無人の時間貸し駐車場を打ち出した人物。息子の西川光一氏が継いだあとも売り上げを伸ばし、今期は駐車場だけで1300億円を突破、28期連続増収の見込みだ。

写真:1、2、5、6:的野 弘路、3、4:皆木 優子、7:北山 宏一
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 自前の駐車場を持っていることは、カーシェアリングビジネスにとってメリットが大きい。TCP事業部として新たに土地開拓が不要な上、土地代はパーク24全体で吸収できるからだ。全国にすでに約1万5000カ所存在する自社の駐車場を自社内の調整一つでTCPの「ステーション」として活用できるメリットは小さくない。すでに駐車場の2カ所に1カ所がTCPのステーションとして利用されている計算だ。

 その駐車場を日夜開拓し続けるのが、営業チームだ。駐車場は「想像がつかないほど供給が足りていない」(西川社長)。一方、需要に任せてどんどん土地が湧いてくるわけではない。土地があったとしても、“稼ぐ駐車場”になる見込みがなければ契約は結べない。駐車場の数を年率約10%弱で伸ばせる秘密は、営業力だ。営業体制は今もなお増強を続け、2013年に378人だった営業部隊は今期末には475人となる見込み。昨期19カ所だった営業拠点も2017年には全国100カ所を目指す。

 パーク24の駐車場開拓を支えるのは、昭和さながらのどぶ板営業。足で稼ぎ、空き地の情報を徹底的に集め、駐車場を開拓する。インターネットで不動産情報を見るようなことはほぼない。

地域に入り込んでこそ「営業」

 東京都西部の中野区と杉並区の営業を担当する奥村直樹氏は、毎日担当エリアに通い、2時間かけ空き地や月決め駐車場などをチェックする。朝・晩、平日・休日では人通りやクルマの流れが違うため、時間や日にちを変えて同じ場所を何度も見に行くこともザラだ。空き地だからといってすべてが候補になるわけではない。土地の入り口、幹線道路からの距離などを加味して、土地を選ぶ。ここぞと思った場所は、すぐに法務局に確認し、直接地主と交渉する。賃貸契約に至る割合は「100件に1件くらい」だという。

 営業の仕事は土地を探すだけにとどまらない。パーク24の営業陣が注力するのが、「一歩地域へ入り込む」営業だ。

 8月1日。奥村氏や部下の山本啓介氏ら社員4人の姿が、中野区の「なべよこ夏まつり」の中にあった。主催者と同じ黄色いTシャツを着込み、気温35度の猛暑の中、汗を流し祭りを手伝っている。山本氏は、祭りの打ち合わせから参加し、夜中まで杯を交わすこともあった。「山本くんは歌がうまくてね、あれでみんな一気に山本くんが好きになったよ」と地元の商店会長は笑う。

 地域密着の営業が功を奏すことは少なくない。実際、祭りの打ち合わせで、鍋横商店街に店を構える焼鳥屋オーナーから近くの土地が駐車場になるという情報を得た。早速山本氏が交渉に行き、契約獲得につながったという。営業拠点を増やすのは、こうした地域密着営業を可能にするため。「八王子に営業にいくときに、有楽町(パーク24の本社)の名刺を持ってこられるより、やっぱり八王子の住所が印刷されていた方がいい」という西川社長の方針だ。

 営業部隊が体を張って獲得した駐車場が、カーシェアリングにとって大きなアドバンテージになっていることは言うまでもない。「それこそが黒字化の源泉。駐車場を運営していなかったら、カーシェアリングはやっていなかった」と西川社長は断言する。

 ただ、TCPの黒字化達成は、単に駐車場を数多く管理しているからだけでは説明がつかない。2つめの強みが、徹底したデータ活用だ。TCPの「15分206円から」という単価は全国一律。稼働率をいかに上げるか、クルマをいかに「動いている状態」にするかが売り上げに直結する。現在、1台当たりのコストは月額9万3000円。そこからいくら積み上げることができるかが勝負になる。1台当たりの稼働率を上げるために、徹底したデータ活用を行う。

データ主導でサービスを常に改善
●パーク24のデータ活用の流れ
データ主導でサービスを常に改善<br/>●パーク24のデータ活用の流れ
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