社内ベンチャーで新事業発掘

 ミネルパやトレファイドペレットなどの新事業は、15年に新設した「新製品開発推進委員会」が社内の知財や資産を見直して掘り起こしたものだ。

 同委員会はおおむね3カ月に1回の頻度で開催。主に若手社員から集まる事業化提案を全役員で審査する。有望な計画にはその場で予算をつけ、社内ベンチャーとして立ち上げる。社長からの“特命”が下るため、事業化のスピードが速いのが特徴だ。これまで各事業の初期予算として2億5000万円を投じてきた。

 新規事業を推進する一方、既存事業の見直しはまだ不十分だ。18〜20年度の次期中計には「紙・板紙の生産調整を盛り込まなければならない」と馬城社長は表明する。

 20年度までに痛みを伴う構造改革に取り組めば、芳賀義雄・前社長時代から提唱してきた「総合バイオマス企業」への変身が現実化する。30年にCNFが開く新時代に向け、日本製紙の新たな十年の計も見えてくる。

(寺岡 篤志)

INTERVIEW
馬城文雄社長に聞く
CNFを大黒柱に育てる

 問 CNF(セルロースナノファイバー)の収益貢献の見通しは。

(写真=稲垣 純也)
(写真=稲垣 純也)

 答  紙・板紙は今後も重要な事業だが、CNFはそれと並ぶ規模になる。まず増粘剤や機能性シートを2020年度までに製品化する。事業規模は数十億円が当面のメドだが、成長が期待できる自動車分野を開拓することで、30年度までに日本製紙の大黒柱に育てる。

 問  炭素繊維メーカーは、加工技術や販路の獲得のため、1次部品メーカーなど川下企業への資本投入を進めている。CNFでも同様の戦略を考えているのか。

 答  日本製紙もCNF事業において、ただの素材屋で終わらないスキームを確立しなくてはいけない。(企業買収により)バリューチェーンを伸ばしていく。自動車分野に限らず、海外で川下の企業の情報を集めている。既にボールを投げているものもある。資金面の制約でチャンスを逃さないよう、様々な資金調達の選択肢を持っておきたい。

 問  主力の洋紙事業は円安と原燃料高に苦しんでいる。

 答  原料コストと市況のバランスをとるには時間がかかる。このタイムラグが16年度の業績の足を大きく引っ張った。長期的にみれば、構造的な需要減も否めない。次の中期経営計画では、一歩踏み込んだ生産能力の調整も必要だ。

 生産調整は雇用への影響が少ない方法でやる。業界再編を考える前に、まずは段ボールなど需要が伸びている分野でも設備をむやみに増やさず、他社との提携によるOEM(相手先ブランドによる生産)を検討していく。

 ただし、汎用品は業界全体で一定の能力削減が必要だ。シェアの大きい日本製紙にしわ寄せが来るのはやむを得ない。

 問  紙事業の成長分野として、液体容器の原紙や紙コップで買収を仕掛けた。どのような成長を見込んでいるのか。

 答  こうした分野では17年度で450億円の売上高を目標としている。20~23年度には食品容器分野と統合して1000億円を目指す。

 問  利益構造はどう変わっていくのか。

 答  営業利益では現在、紙事業が6割を占める。だが、新素材が成長していけば、この比率は下がっていくだろう。新分野の開拓により、紙事業の比率は、20年度では5割、30年度には3割に下げたい。

(日経ビジネス2017年4月10日号より転載)