いまだに「Koyo」「Toyoda」のブランドロゴを使い続け、「何の会社かよく分からない」とやゆされることもしばしば。内部からも「合併してもなかなかシナジーを生み出せなかった」(ジェイテクト幹部)との声が漏れる。

 一つの突破口が、SBWだった。光洋が得意だったのは、「コラム式」と呼ばれるハンドル近くにモーターを設置する電動パワステ。小型車向けが大半だ。一方、豊田工機が得意なのはタイヤを動かすギアの近くにモーターを設置する「ラック式」と呼ばれるパワステだ。

 SBWではハンドルとギアを切り離すため、その両方にモーターや制御装置が必要になる。「両社の技術を持ち寄って、ようやくSBWを量産化できるところまで来た」。山川部長はこう話す。

部品と機械を持つ強み

 こうした2社の“合わせ技”は、ステアリング領域だけにとどまらない。

 ジェイテクト香川工場(東かがわ市)。クルマのトランスミッションなどに使われる円錐ころ軸受けを生産するこの場所で、同社の安形哲夫社長が「当社の事業の軸になる」と断言する取り組みが始まっていた。IoT(モノのインターネット)によるスマート工場化である。

 第一工場に、軸受けの内輪部材を組み立てる8つのラインが並ぶ。ライン長20m程度の中に、研磨や洗浄、組み立て、検査など10以上の作業工程を含むラインだ。ラインの直上に、トヨタ生産方式の代表的な設備である「アンドン(異常表示盤)」が並んでいた。

 一般的なアンドンは「正常」「異常」を緑や赤色で表示するもの。ところが香川工場では、設定したサイクルタイムからの遅れなどが色の濃さで細かく表示され、ラインの状況が、工程ごとにより細かく表示されていた。

 これは、工作機械部門が開発したデータ収集機器「トヨプック・プラス」を各機械に設置してシステムとつなぎ、センサーから得る情報を一元管理したからできることだ。

 「見える化」だけではない。香川工場では、ライン別、工程別の停止回数や、生産した部品全ての寸法をデータ化して、ラインを止めたり、寸法誤差を生んだりする要因を突き止めた。

 不具合の要因を分析してすぐに対策を打つことで、異常停止の回数は30%減少し、稼働率は4%改善した。今年4月からは、工作機械の刃具の交換タイミングを予測して、ラインを動かすスケジュールを組み立てる取り組みに発展させる予定だ。

 「生産を熟知する我々が使い勝手を検証することで、IoT機器にフィードバックできる」。香川工場の玉井俊彦工場長はこう言う。自社製のIoT機器を自社工場の実証実験で確かめ、他の工場や他社工場での使いやすさを検証する──。部品と工作機械をどちらも持つジェイテクトの強みはここにある。

 昨年、この強みが「世界初」を生んだ。埼玉県狭山市にあるジェイテクト狭山工場。動力を伝える装置であるデファレンシャルギア(デフ)を量産する工場に、見慣れない工作機械があった。「ギアスカイビングセンター」。同社が世界で初めて量産した機械である。

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