「裏地あったかパンツ」は婦人物で定価3900円。パンツの中心価格が1900円という、しまむらの品ぞろえの中では、高めの商品だ。裏地に起毛素材を使い、重ねばきしなくても温かい点が消費者の心をつかんだ。通常のパンツ類の仕入れ本数はだいたい70万本だったが110万本を仕入れた。それでも売れ残りはほとんどなかったという。

 単品の魅力で勝負するやり方は、しまむらではあまり見られなかった手法だ。だが「裏地あったかパンツ」の成功を受けて、今後はこのような打ち出し方もあると野中社長は考えている。

消費者が「納得できる」値上げをする
粗利益率を上げるために、一部商品の値上げも実施した。素材や機能にこだわることで付加価値をつけ、買い手が納得する価格に

 商品価格を実質的に引き上げる試みも始まっている。単純に値上げするだけでは消費者は離れてしまうため、値上げをするものについては、生地や機能を工夫、追加するなどして消費者が納得できるようにした。

 例えば、980円で売っていた子供用のセレモニー用シャツは、今年、生地を良くするなど機能を追加し、パッケージを変えて1200円で販売した。素材を工夫したこの春夏向けの目玉商品「素肌涼やかデニム&パンツ」も2900円と、2000円前後が主力のしまむらのパンツ類と比較すると高めだ。しかし、品質が良ければ消費者は付いてくると手応えを感じている。

 しまむらの足元の粗利益率は31%(2015年2月期)と、他のアパレルと比較すれば依然低い水準にあり、今後上げる余地があると考えている。「1年で1ポイントずつ上げて最終的には40%くらいまでにしていきたい」と、北島氏は話す。

百貨店の顧客も取り込み

 しまむらが変革を急ぐのは「今が成長するチャンス」と考えているからだ。

 現在、衣料品業界は全体に販売低迷に苦しむ企業が目立つ。地方ではアパレルの主要販路の一つである、百貨店の閉鎖が相次いでいる。ショッピングセンターも優勝劣敗が鮮明になり、入居するアパレルテナントが閉鎖する例も増えている。ワールドやイトキンなどの有名アパレル企業もブランドを統廃合したり、人員削減をするなど厳しい経営を迫られている。

 しまむらは、プレーヤーが減ってきた今こそ、シェア拡大の余地があるともくろむ。これまで低価格のカジュアル衣料を主戦場としていたが、少し高い価格帯の衣料品市場にもアプローチできるとみている。「閉店した地方百貨店や専門店の顧客が『しまむらも捨てたもんじゃない』と来てくれるような店を目指したい」と、野中社長は野心を隠さない。2015年に埼玉県に新しい物流センターを開設したのも、規模拡大をにらんだ投資と言えよう。

 しまむらの売上高は現在5000億円台。一企業の衣料品販売額としてはユニクロに次ぎ2位につける。国内衣料品市場は現在10兆円弱だが「そのうちのシェア1割」(野中社長)、つまり1兆円の売り上げを目指すという。

 そのためには「ファッションセンターしまむら」以外の業態開発も欠かせない。現在、別の業態は4つある。10~20代向けヤングファッションの「アベイル」、ベビー・子供の「バースデイ」、雑貨の「シャンブル」、靴の「ディバロ」だ。これらの4業態が合わせて約600店ある。

 「バースデイ」が一番の稼ぎ頭で、2016年2月期は36店を出店した。将来的には店舗数を500まで増やす計画で、しまむらに次ぐ主力業態になりつつある。

 しかし、その他の業態については苦戦しているのが実情だ。「アベイル」は、2015年2月期は既存店の売上高が前の期と比べて8%減少、2016年2月期も上半期が3%減と苦戦した。アベイルは全店を対象に改装を進めてきた。売り場のレイアウトを変更したが、さらに商品構成を見直す考えだ。

 成果が出ているとは言いがたい新業態だが、野中社長は多少資金を投じてでも、新業態を軌道に乗せようと考えている。しまむら業態を盤石な体制に保ちつつ、新業態の試行錯誤を続ける構えだ。規模拡大に向けて、将来的にM&A(合併・買収)も視野に入れており、良い案件があれば検討したいという。