その代わり、ある店舗で商品が売り切れると、コントローラーと呼ばれる、本社の在庫管理担当者が、商品を在庫のある日本全国の他店舗から取り寄せる。そのための高度な自社物流網も確立している。コントローラーが店舗間移動を駆使して、在庫を寝かせず商品を売り切るからこそ、安値で売っても安定した利益を確保できるわけだ。取引先から返品なしの「完全買い取り」で仕入れることができるのも、在庫コントロールの力が土台になっている。

 この「超高速回転」とも称される商品回転の速さによって旬の商品を安値で売ってきたのだが、ここ数年は一転、無駄な在庫がたまり、前のシーズンの商品の値引き販売が常態化した。商品があふれて何を売りたいかが分からない売り場になっていた。

 「商品の量が売り場のキャパシティーを超え始めていた」。改革を主導した北島常好・専務取締役はこう振り返る。背景にはこんな悪循環があった。売り上げが鈍って在庫がたまると、選びにくい売り場になり、値下げ販売も増える。バイヤーは成績を上げようと、また大量に仕入れてしまう。

 問題は表れていたのだが、なかなか抜本的な手を打てずにいたのだ。

売れ残りにハサミを入れる

しまむらの野中正人社長は「店舗数の規模拡大に見合った仕組みが確立できていなかった」と反省する(写真=的野 弘路)

 粗利益率を下げてでもいいから過剰在庫をゼロにせよ──。野中社長が、そう決めて痛みを伴う改革に着手したのが、2015年初めのことだ。

 全ての商品に販売を終了させる期限を設け、期限内に値引きしても売れ残ったものについては店頭に置かず、ハサミを入れて処分するよう徹底した。

 無駄な在庫をなくすとともに、商品棚など、什器の高さを低くして雑多な印象をなくし、売り場を見渡しやすくするようにもした。

 また、在庫の一掃に本格着手する前に先駆けて実施したのが、在庫をためないようにする仕組みの再構築だ。しまむらの売り切れ御免モデルを支える、商品部の体制にメスを入れたのである。

 商品部では、バイヤーが主導して、どんな商品をどれくらいの量仕入れるかを決める。コントローラーは仕入れた商品を、どのタイミングでどの程度値引きして売り切るかなどを計画・管理するものの、バイヤーの仕入れに関しては口を出しにくい状況になっていた。

 店舗数が少なかった頃は、コントローラーが店舗に頻繁に足を運んで、販売現場の詳細な情報を持っていた。この「情報力」を武器にして、例えば「そんな量を仕入れたら必ず余ってしまう」などと、バイヤーをけん制することもできたわけだ。

 しかし、店舗数が1000を超えると本社での業務が増えたこともあり「商売で一番大切な現場を見ることをしなくなっていた」(野中社長)。このためコントローラーはバイヤーが仕入れた商品を計画的に売るだけという、従属的な立場になりがちになっていた。

 そこでバイヤーと対等な立場で本来の仕事ができるように、コントローラーの権限を強化することにした。まずはコントローラーを商品部から独立させ、商品の仕入れ価格や量が妥当なものなのか監視できるようにした。