2期連続で営業減益に沈んだしまむらが、浮上のチャンスをつかみ始めている。 もともと効率経営に定評があったが、1300店超の規模となり歯車が狂っていた。 不良在庫をためないように仕組みを作り直し、グループ3000店の目標に向け布石を打つ。

<b>売り場は以前のように過剰な在庫がなくなり、商品が選びやすくなった</b>(写真=竹井 俊晴)
売り場は以前のように過剰な在庫がなくなり、商品が選びやすくなった(写真=竹井 俊晴)

 3月中旬の平日、東京都練馬区の住宅街にある、カジュアル衣料品店「ファッションセンターしまむら」には、朝10時の開店前から2~3人の女性が並んでいた。開店後、駐車場は次々に来店する車で埋まっていく。

 店頭で目に入るのはトレンチコートやロングカーディガンといった薄手の羽織ものだ。「こういうの欲しかったの」。母親と訪れた女子学生がすぐに飛びついた。トレンチコート税込み3900円、ロングカーディガン1900円。価格はいずれも安い。

 もう先送りしない──。野中正人社長が号令をかけ、各店にたまっていた不良在庫を一掃したのが2015年。商品の仕入れと在庫コントロールの仕組みも一新した成果が、売り場に表れているようだ。商品が過剰にある印象はなく、通路も広く選びやすい。

効率経営の仕組みが制度疲労

 「ファッションセンターしまむら」を主力に衣料品店をチェーン展開するしまむらは、1990年代後半以降、景気低迷や賃金の伸び悩みで、衣料品がなかなか売れない時代が続く中でも、安定して成長を続けてきた。中心価格で1000~3000円、1000円未満の商品も多いという「低価格戦略」が、しまむらの最大の武器で、イトーヨーカドーやイオンなど総合スーパーから顧客を奪ってきた。

直近は2期連続営業減益だった
●しまむらの売上高と営業利益
直近は2期連続営業減益だった<br />●しまむらの売上高と営業利益
[画像のクリックで拡大表示]

 リーマンショック後の2009年ごろ、しまむらの安価な服で、コーディネートを楽しむ女性を「しまラー」と呼ぶ現象も見られた。

 だが、店舗数が1200を超えた2010年頃から既存店の前年割れが目立ち始める。2014~15年2月期は、1988年の上場以来初めて2期連続営業減益に陥ってしまった。それまで「優等生」だったしまむらに何が起こっていたのか。

 その要因は「仕組みの限界」だったと野中社長は振り返る。「500店舗だった頃と同じやり方で、現在の1300店舗を動かそうとしていた」。毎年40~50店舗前後を新規出店していたが、オペレーションは大きく変えていなかった。

 しまむらの強さの一つは、きめ細かく計算され尽くした、商品供給や店舗運営の仕組みだ。1店舗当たりの広さは1000平方メートル前後で、標準化されている。そこに婦人服、紳士服、子供服、雑貨、靴など約5万点のアイテムを、本部のマニュアルに沿って陳列する。アイテム数は多いが、売り切れると追加発注はしない「売り切れ御免」が原則だ。

<b>しまむらは郊外のロードサイドを中心に出店、1000平方メートル程度の広さの店舗を構える</b>(写真=竹井 俊晴)
しまむらは郊外のロードサイドを中心に出店、1000平方メートル程度の広さの店舗を構える(写真=竹井 俊晴)

次ページ 売れ残りにハサミを入れる