通常の結婚式の場合、計画時点から1年前後先の挙式日を決め、会場を確保してから準備が本格化する。逆に言えば、春の時点で夏の予約が入っていないと、このスペースを通常の販路でさばくことは難しい。放っておけば無駄になる在庫だからこそ、アールキューブがスペースを格安で押さえられる。ホテルなどにとっても、接客や料理の提供で稼げるためメリットがある。

 会費婚の場合、会場確保の都合で相談から挙式まで半年弱という短期決戦のケースが多くなる。最短では挙式まで1カ月半のカップルもいた。

 アールキューブが提携している式場は、東京都と神奈川県、千葉県、埼玉県で100カ所を超える。例えば、渋谷のセルリアンタワー東急ホテルや隠れ家風のおしゃれなレストラン、クルーズ船まで幅広い。「空き」さえあれば、オーソドックスな結婚式はもちろん、カジュアルなパーティーなど新郎新婦のスタイルに応じて選べる。

「リゾート婚」組の利用も

 費用を抑制するため、人件費のかかるウエディングプランナーとの打ち合わせは必要最小限にとどめる。結婚式と言えば、微に入り細に入り、決めごとの連続というイメージが強い。だがIT(情報技術)機器などもフル活用し、対面による打ち合わせは最低2回で済ませる。山崎令二郎社長は「後から様々なオプションを薦めて料金をつり上げることもない」と話す。

 最近増えているのが、身内だけで海外などのリゾート地で挙式をしたカップルの利用だ。改めて友人や職場関係の人たちを招いて身近な場所でお披露目をする際、気軽に開ける会費婚を選んでいる。アールキューブは海外ウエディングを手掛けるエイチ・アイ・エス(HIS)などと提携し、こうした顧客層も取り込んで受注を伸ばしている。

 山崎社長は都立高を卒業後、ニュージーランドのラグビーチームで一時プレーしていた経歴を持つ。帰国後に今後どう過ごそうかと思っていたところ、目に留まったのが趣味の音楽。周囲に音大出身の友人も多かったが、音楽で生計を立てるのは容易ではない。

「新郎新婦、招待客、式場、皆にメリットのある事業」と語る山崎令二郎社長(写真=陶山 勉)

 そこで少しでも才能を生かしてもらおうと、生演奏の音楽家を披露宴会場などに派遣する会社を立ち上げた。これがアールキューブだ。だが多くの式場は新郎新婦には生演奏料金として10万~20万円を請求する一方、音楽家に支払うのは数万円という現実を知る。式場は自社の直接の顧客であるだけに、婚礼ビジネスの実態に釈然としない思いを抱きつつ、我慢していた。

 転機は2011年の東日本大震災。自粛ムードの中で演奏のキャンセルが相次いだことで、新郎新婦から見て、費用がブラックボックス化している婚礼ビジネスに真正面から斬り込む覚悟を決めた。それが会費婚につながった。

 現在事業展開しているのは提携先のある1都3県にとどまる。だが、新郎新婦・招待客・式場の3者にメリットのある会費婚は、全国で潜在的な需要が見込める。ナシ婚だと後から後悔する人も多く、割安サービスの社会的意義は小さくない。今後は首都圏以外へも対象地域を拡大していく方針だ。

(日経ビジネス2016年4月11日号より転載)