1万人の消費者がウェブ上で新商品を生み出す新サービス「Wemake」を手掛ける。大手メーカーが次々に利用し始めた。企業内部だけで議論する時代は終わった。

会社の外から商品の種
会社の外から商品の種
コクヨがWemakeを利用して外部の消費者と議論しながら作った新商品の卵。約160のアイデアが集まった(写真=吉成 大輔)
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 3月上旬。文具大手コクヨのオフィスに、見たこともない文具の試作品が次々に現れた。文章が隠れないように曲がった形の付箋や、つり下げることのできるクリアファイル、先端が斜めにカットされ押しやすいハンコ…。使ってみたくなるものばかりだ。

 これら新商品の卵は、コクヨの社員が企画・設計したものではない。外部の消費者1万人がインターネット上でアイデアを寄せ、コクヨの担当者と「議論」して生まれた。

 コクヨが利用したのは「Wemake(ウィーメイク)」。ベンチャー企業のA(エイス)が提供するサービスだ。富士ゼロックスやオリンパス、王子製紙などの大手企業も、このサービスを利用して商品開発を進めている。既に発売したものもあり、今夏に新たに2つの商品が世に出る見込みだ。

ウェブ上で改善を繰り返す

<b>山田歩氏(左)と大川浩基氏の2人が共にAの社長を務める</b>(写真=吉成 大輔)
山田歩氏(左)と大川浩基氏の2人が共にAの社長を務める(写真=吉成 大輔)

 Wemakeは、約1万人の消費者やクリエーターなどの会員を「コミュニティー」として抱える。利用したい企業はこのコミュニティーに、新商品のコンセプトを課題として与える。例えばコクヨなら「当たり前を更新する文具のデザイン」、オリンパスなら「アウトドアでの新しい撮影体験を実現するカメラアクセサリー」といった具合だ。

 Wemakeでは、企業からの課題を、商品化を前提とするものに限っている。このコンセプトに対し、1カ月程度で1万人の消費者が自らのアイデアをプラットフォーム上で提案する。課題によっては200以上の提案が集まる。

 ここまでなら、あまたあるクラウドソーシングサービスと変わらない。Wemakeの強みは、提案が集まってからのプロセスにある。

 「カメラとつえを接続する部分について、最適な接続位置、機構をどのような仕様にすればいいか考えましょう」

 「流用できそうなパーツ市販品について、知っている方がいらっしゃいましたら、ご教授お願いします」

 「私は、市販の安い2ウェイタイプのストックを上だけカットして雲台を付けています」…。

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