数字タブーの営業会議「PDCA」を機能させる

 2月27日、朝9時。東京・蔵前のライオン本社の会議室に、営業部のスタッフが続々と集まっていた。30分ごとに、若手社員が担当の販売店にどのような施策を提案・実施しているかなどを説明。それに対して、中堅・幹部クラスが様々な指摘をしていく。「売り方マネジメント会議」と呼ばれるもので、6つの支店と2つの営業部で12年から毎月実施されてきた。

営業の「売り方マネジメント会議」(写真=陶山 勉)

 狙いは、営業施策のPDCA(計画・実行・評価・改善)を確実に回すこと。この会議が、重点ブランドの絞り込みとともに、安売りから脱却するもう一つのカギになった。

 PDCAは、どんなビジネスでも基本だ。しかし、掬川正純常務は、「できている社員もいたが、組織的にはできていなかった」と振り返る。

 これまでも高付加価値品を売る努力はしてきた。しかし、うまく売れても「なぜ売れたのか」を十分に検証せず、ノウハウの共有や継承がなされていなかった。一方、計画と実績のギャップが生じた場合には、営業は目標達成のために売りやすい商品、つまり既にブランドが浸透している従来商品の安売りに走った。「苦しむほど数字を追いかける悪循環に陥っていた」(掬川常務)

 この悪循環を断ち切るため、濱社長ら経営陣は、「PDCAのプロセスなき結果は認めない」という方針を決め、そのプロセスを「見える化」するために売り方マネジメント会議を設置した。

 プロセスの議論に集中するため、会議で数字を語ることはタブーとした。ヘルス&ホームケア営業本部の郡祐一営業開発部長は、「初めは戸惑いがあった。数字を発表しない会議は経験していなかったし、下手な発表をすると責められるのではと恐れる若手もいた。実績をアピールしようと、数字を言ってしまう者もいた」と打ち明ける。

 そんな懸念を払拭するために、発表内容に1つでもいい点があれば、まずそれを称賛することから始めるなど、会議は周到に運営された。そのうえで、PDCAを回すために「『なぜ』を徹底的に繰り返した」(郡営業開発部長)。

 従来は、事業部が用意したマーケティングプランを、営業がそのまま担当の販売店に提案することが多かった。しかし、会議で「なぜ」と繰り返し問われることで、それぞれ販売店が抱えている課題を深く探り、ソリューションを個別に考えるようになってきた。

 例えば、液体洗剤のNANOX。販売管理費が高いGMS(総合スーパー)向けには、売り場全体の利益率が向上するような棚割りを提案する。一方、顧客が月に1度程度しか訪れないホームセンター向けには、1カ月間買い足さなくていいような本体と詰め替えパックのセット商品を提案する。当たり前のようだが、それができていなかった。

 「細かい提案ができるようになると、販売店も信頼して棚を任せてくれるようになる。営業も自信が湧き、より積極的に提案する。そんな好循環が回り始めている」(掬川常務)