代表的なブランドがクリニカだ。1981年に酵素が入った唯一の歯磨きとして誕生し、ロングセラーとしてオーラルケア分野で大きな存在感を放つ。

 だが、消費者に浸透しているがゆえに、「家族で使う安いブランド」というイメージが定着してしまっていた。小売り各社はチラシの目玉商品として扱い、ライオンもまた、そのチラシに便乗して利益ではなく売り上げを追った。

 この状況から抜け出すため、2014年をターゲットにクリニカ再生プロジェクトが動き出した。ヘルス&ホームケア事業本部オーラルケア事業部の横手弘宣・ブランドマネジャーは、「歯磨きは売れていたが、それ以外の商品の売れ行きが鈍かった。それでも、オーラルケアのブランドとして、高付加価値化を狙える余地はあった」と話す。

 着目したのが、「予防歯科」という概念。虫歯や歯周病を予防しようという啓蒙活動を展開することで、クリニカを予防歯科のための総合ブランドとして再定義することにした。

 歯科医院向けに販売していたY字型フロスの一般販売を始めるなど、14年に歯磨き・歯ブラシだけではなく、洗口液などを含むクリニカブランドの商品を全てリニューアルした。それに合わせて、「クリニカ」というブランド名を出さない予防歯科啓蒙のテレビCMを展開するなど、マーケティング予算を前年度比で約1.3倍に拡大。行政や学校、歯科医などを巻き込んだ啓蒙活動を実施すると同時に、販売店には予防歯科という切り口でクリニカブランド全体を売り込んでいった。

 「単品の商談だとブランドとしての世界観を伝えられない。その結果、安売りの対象になってしまう。そうした状況から抜け出したかった」(横手ブランドマネジャー)

 販売店にライオンの本気度を示すために、新商品を継続的に仕込んだ。15年には寝る前にフッ素で歯をコートするジェルなどを発売、16年には歯磨きと歯ブラシを再びリニューアル。そして今年、子供が歯磨き中に転んでもけがをしないように、柄が柔らかいゴムでできている子供用歯ブラシを発売した。価格は一般的な子供用歯ブラシより5割ほども高い。

 こうした取り組みの結果、歯磨きと、歯ブラシや洗口液などの関連商品を同時購入するケースが増えた。クリニカブランドの売上高は3年連続で2ケタ成長を続けている。

「予防歯科」というコンセプトを軸にブランド展開する「クリニカ」。写真はドラッグストア「トモズ」の店内(写真=陶山 勉)