ゴミとして捨てられていた卵の殻を原料にしたスポーツ用の白線などの商品を次々に開発。天然素材で、安全性が高く、環境にやさしいといった特徴が支持され、利用が拡大している。
(日経ビジネス2018年4月2日号より転載)

卵の殻を乾燥させて粉砕(左下)。スポーツ用の白線として再生する。「天然素材で安全性が高い」と語る下浩史社長(上)(写真=上・左下:菅 敏一)
カキーン。ピッチャーの球を打ったバッターが、1塁に向かって「白線」沿いを勢いよく走っていく。野球でよく目にするシーンだ。サッカーやテニス、陸上競技などでも使われる白線は、かつては消石灰(水酸化カルシウム)を使っていた。だが、目に入って障害が起きたり、皮膚がかぶれたりする問題が頻発。最近は、炭酸カルシウムなどの代用品に置き換えられている。
そんな流れの中で新たな素材が注目を浴びている。「卵の殻」をリサイクルして作った白線だ。開発したのは佐賀市に本社を置くグリーンテクノ21。「天然素材で、口や目に入っても危険が少ない。天然芝グラウンドで使っても、芝が傷みにくいといった特徴が支持されている」。下浩史社長はこう強調する。
小中学校で利用が急拡大
2007年に販売を本格化して以来、幼稚園、小中学校、高校など6000校以上に利用が拡大。18年1月期の同社の売上高は2億9000万円に達した。
下社長が卵の殻に目を付けたのは02年ごろ。当時は小さな建設会社を経営しながら、新たな事業を興すことを考えていた。そんな下社長が、仕事で訪れた菓子メーカーで偶然目にしたのが、卵の殻が山積みにされ、処分に困っている様子だった。「それが、なぜか私には宝の山に見えた」(下社長)
調べてみると、全国で年間約20万トンもの卵の殻が廃棄されているという。下社長はこの捨てられる卵の殻を何かに活用できないか考えた。
調査を続けたところ、天然カルシウムの白い卵の殻は、粉末状にすれば、白線や建材、塗料など様々な用途に使える可能性があることが分かってきた。
事業化の一番のハードルだったのが、効率的にリサイクルする仕組みを作ること。当初はグリーンテクノ21が処理場を作り、食品加工業者を巡回して卵の殻を集めることを考えていた。
だが、この方式には問題があった。殻を放置する時間が長くなると、悪臭を放って、近隣に迷惑をかけかねないことだ。そこで機械メーカーの協力を得て、食品加工業者の拠点に小型の処理用機器を設置。卵の殻をすぐに乾燥させて粉砕できるようにした。粉砕後の粉をグリーンテクノ21が買い取り、自社工場で製品に加工する。
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