当初からターゲットは外国人だった。新木氏は「10年以上海外に住んでいたから、僕は半分外国人。海外の人が求めるものが分かる」と話す。ホテルやゲストハウスで得た経験や情報も生かし、外国人仕様のサービスを確立していった。

 例えば集客。米エクスペディアなどの旅行予約サイトに情報を掲載しつつ、外国人が好む、写真を多用したデザイン重視の独自のホームページを立ち上げた。「日本のサイトは全ての情報を盛り込もうとする。外国人から見れば過度な説明はバカにしているととられかねない」(新木氏)。フェイスブックなどのSNS(交流サイト)での情報発信も強化し、今では、自社サイトからの予約が6割を占める。

 従業員のうち接客を担当する6人は全員、外国人や帰国子女など外国に住んだ経験を持つ。「日本人は『おもてなし』に自信を持っているが、気を使いすぎれば外国人は居心地が悪い。外国人の感覚を持っている人が接客した方がいい」(新木氏)と考えているためだ。

 宿泊プランも他の宿泊施設とは異なる。日本人と比べて長期滞在の需要が大きい欧米人を想定し、町家レジデンスインは一棟貸しとし、1カ月以上滞在する場合は割引プランを設定。料金も、3人以上で泊まると割安になるほか、調理器具や洗濯機などもそろえた。こうした取り組みにより、同社が運営する施設の宿泊客の74%が外国人だ。

 冒頭のように、今では外国人の嗜好にあった宿泊施設を一から作る町家の再生事業も始めており、運営棟数は右肩上がりで増えている。

金沢にも5棟オープン予定

 2015年にオープンしたのは15棟。2016年3月期の売上高は、前年同期の2倍となる4億円に拡大すると見られる。2016年には京都で新たに20弱の物件が加わる予定だ。町家を宿泊施設に改装したいという引き合いは多く、「空き家のオーナーや不動産会社から毎日問い合わせがあって、進行中の案件の数が把握できない」(新木氏)ほどだという。

空き家の増加は深刻な問題に
●日本の住宅に占める空き家の割合
出所:総務省「住宅・土地統計調査

 こうした空き家活用の需要は、京都に限らない。総務省によると、2013年時点で日本全国の住宅に占める空き家の割合は約14%。治安悪化や火災の原因にもなる空き家の有効活用は、国全体で大きな課題になっている。

 AJインターは2016年、金沢市に5棟、町家を転用した宿泊施設をオープンする。「外国人の観光需要がない地域に進出し、町家レジデンスインのブランドで集客して地域の復活につなげたい」と新木氏。その先には全国展開を見据えている。

(中 尚子)

(日経ビジネス2016年3月28日号より転載)