経営難に陥ったスーパー銭湯などを改装し、ユニークな複合レジャー施設として生まれ変わらせる。日帰り温泉をカフェやアウトドア風の施設と組み合わせた新業態を開発。地域活性化にも取り組む。
(日経ビジネス2018年3月26日号より転載)

気軽なレジャー施設として丸一日楽しめる銭湯「おふろcafe」。マンガや雑誌を読んだり、ボルダリング(右下)を楽しめたりする
「これが本当に銭湯なの?」。埼玉県熊谷市の温浴施設「おふろcafe bivouac(ビバーク)」は、初めて訪れた人の多くが驚くようなユニークな施設だ。館内にはテントやハンモックが並んでおり、「ボルダリング」と呼ばれる壁のぼりのスペースまである。さらにおしゃれなバーカウンターや、1万冊のマンガや雑誌も備えている。
分類上は銭湯でも、内部はキャンプ場やカフェなどを融合させたような空間だ。運営するのは2011年設立のベンチャー、温泉道場(埼玉県ときがわ町)だ。埼玉県、三重県、静岡県で、個性的な温浴施設を6カ所展開する。
これまでも「スーパー銭湯」と呼ばれる多様なお風呂を中核にした施設はあった。だが温泉道場は、お風呂よりもむしろ様々なレジャーを楽しめることを売り物にする。
競争相手が少ない穴場市場
本社 | 埼玉県ときがわ町玉川 3700 |
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資本金 | 335万円 |
社長 | 山﨑寿樹 |
売上高 | 12億4800万円 (2017年3月期) |
従業員数 | 270人 |
事業内容 | 日帰り温浴施設の開発・運営 |
●温泉道場の売上高推移

創業者の山﨑寿樹社長は元経営コンサルタント。新業態に取り組んだきっかけは、斜陽と見られていたスーパー銭湯が「実は競争相手が少ない穴場市場だと感じたからだ」(山﨑社長)。ホテルや旅館といった浴場を売りものにした施設の中には、時代に合わせて新しい特徴を取り入れて業績を伸ばしているケースもあるが、日帰り温浴施設はほとんど変化することなく、客離れが加速していたという。
温泉道場は、経営不振のスーパー銭湯などを買い取ったり、賃借したりして改装する場合が多い。ポイントは「お風呂以外のドライエリアを充実させること」(山﨑社長)。施設によっては、浴場エリアにほとんど手を入れていない場合もある。
スーパー銭湯などの日帰り温浴施設を訪れる消費者の目的は、リラックスして滞在時間を楽しむこと。しかし「多くの温浴施設ではお風呂以外は広い畳があるぐらいで、設備が充実していなかった」(山﨑社長)。仮に施設に2時間滞在する場合、ほとんどの時間を浴場で過ごす客はまれだ。ドライエリアを充実させることで、温浴施設の集客力を高められると考えたという。
最初は手探りだった。温泉道場は、創業したばかりの11年に2種類の温浴施設を開業。一方は“昭和の懐かしさ”をテーマに年配層を狙った施設、他方は街中のカフェのようなデザインを取り入れた若者向けの施設だった。すると「想定以上に若者向け施設の利用が多く、おふろcafe展開の原点になった」(三ツ石將嗣執行役員)
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