3児の父親でもある藤代社長。子育てに奮闘する妻の姿を間近で見てきた(写真=陶山 勉)

 カフェで働くアルバイトの採用面接で多くの主婦の話を聞くと、出産を機に会社を辞め、復職できず悩んでいる人が多くいた。パートの面接に応募しても、「子供が小さい方はお断り」と門前払いを食らうケースも多いという。

 15年、藤代社長はシフト制のパートタイマーとして働ける場所と子供の託児スペースを一緒にしたママスクエアの1号店をララガーデン川口にオープン。30人の応募枠に300人が殺到。「保育園に落ちたけど働きたい」「扶養控除の年収103万円以内で働きたい」「産休中のブランクを埋めたい」など、悩みを抱える保護者が押し寄せた。

オムツ替えは自分で

 託児スペースといっても、子供たちのオムツを替えたりご飯を食べさせたりするのは保護者の役割。スタッフが「○○ちゃんのお母さん、オムツ替えお願いします」と勤務中の保護者にサインを出すと、呼ばれた母親はオフィススペースから出てきて、我が子のオムツ替えをする。

 子供が保護者の観察下にあることに加え、食事やオムツ替えなどの世話は保護者自身がするため、ママスクエアは児童福祉法の保育業には該当しない。そのため、スタッフは必ずしも保育士資格が必要ではない。ママスクエアでは認可外保育所の規定に近い広さを確保するなど独自の安全基準を設けているが、通常の保育所に比べ施設展開は格段に容易という利点もある。

 昨年9月には奈良県葛城市と連携し、空き家をリノベーションしたママスクエアを開設。地方自治体が頭を悩ます空き家問題や、地方の雇用創出につながると注目されている。今年は兵庫県加古川市や神戸市など、複数の市町村と連携する計画だ。

 ララガーデン川口のように商業施設に設けるケースも今後増えていく。ネット通販の普及で商業施設側が客数の減少に頭を悩ませるなか、施設内にママスクエアを設ければ集客力の向上も期待できる。ママスクエアの拠点数は16年度で累計全国15カ所。19年度までに165カ所に増やす計画だ。

2019年度に全国165カ所を目指す
●「ママスクエア」の施設数計画(累計)

 昨年からは「託児付きサテライトオフィス」を開始。ママスクエアのワーキングスペースを机ごと周辺の会社に貸し出す。第1弾として昨年6月に六本木ヒルズ内にオープン。六本木ヒルズ内の企業数社がママスクエアの机をレンタルし、産休明けの社員が本社ではなく一定期間子供のそばでリモートワークできる環境になっている。

 企業内保育園の場合、設置や運用のコストが高く付くが、サテライトオフィスの場合、机一つあたりのレンタル料は月11万円から。保育園や託児所を作ったり、新たな人材を雇って再び教育したりすることなどのコストを考えれば、高い値段ではないという。

 「保育園と競合するのではなく、保護者の選択肢を1つでも増やしたい」。藤代社長はママスクエアの存在意義を強調する。待機児童、働き方問題、空き家、商業施設の集客力低下──。ママスクエアは、日本が抱えるたくさんの課題を一挙に解決する拠点となる可能性を秘めている。

(日経ビジネス2017年3月20日号より転載)