日本初のリーガルテック企業

 起業のきっかけは守本社長の防衛本能だった。グローバル化の進展で日本企業が米国で訴訟に巻き込まれるケースが増えてきたが、「米国の訴訟支援会社や弁護士に訴訟を丸投げにして不利益を被る日本企業があまりに多かった」(守本氏)。そんな不条理から日本や日本企業を守りたいという欲求が、UBIC立ち上げの根底にある。

リーガル事業を強化しつつ新規事業も展開
●米国市場を重視してきたUBICの歴史
リーガル事業を強化しつつ新規事業も展開<br/>●米国市場を重視してきたUBICの歴史
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 まず注力したのは米国のリーガルテック市場への対応だ。リーガルテックとは、法曹を意味するリーガルと、テクノロジーを掛け合わせた造語。訴訟関連の証拠調査でIT(情報技術)を使い、電子データの証拠を集める事業者の業界を指す。

 米アップルと韓国サムスン電子がスマートフォン分野で激突した訴訟合戦が代表例だが、米国ではライバル企業同士の訴訟が日常茶飯事。そのため米国では、リーガルテック分野に約1200社もの企業が存在する。あらゆる業界で訴訟は増加しており、米国を中心とした世界のリーガルテック市場は右肩上がりで成長。年平均16%超の伸びが続き、2022年には210億ドルを超えるようになるとの予測もある。

2013年ナスダック上場時の様子。前列左から3人目が守本正宏社長
2013年ナスダック上場時の様子。前列左から3人目が守本正宏社長

 UBICは2013年、ナスダック市場に上場した。これにより、「米国における社名の認知度と信用度が格段に増した」(池上成朝・副社長)。上場で得た資金を元手に買収攻勢をかけ、2014年にワシントンを本拠地とする訴訟支援会社の米テックロー・ソリューションズを、2015年にはサンフランシスコを中心に西海岸をカバーする米エヴォルヴ・ディスカバリーを買収した。

 今後も北米市場の強化を進める予定で、中西部をカバーできるシカゴなどを拠点とする同業、ヒューストンなどを中心に南部をカバーする同業企業の買収先を探していく方針だ。

 同業企業の買収は営業基盤を確保するためだ。政府案件やIT、製造業、金融、エネルギーなど、既に多様な顧客層を抱え、有能な弁護士とのパイプを持つ同業企業を傘下に収めることで、北米における訴訟支援事業をさらに強化したいと考えている。

 ただ、競合がひしめく米国市場で、後発かつ日本企業のUBICが勝ち抜いていける勝算はどこにあるのか。それが、アジア言語の解析に強いITシステムと、訴訟の証拠探しを劇的に効率化できる人工知能(AI)を持つことだ。

 「KIBIT(キビット)」と呼ぶ独自開発のAIは、少ない学習量で人間の勘や暗黙知を学び、的確な判断を下せるようになる点が特徴だ。

UBICの武田秀樹CTO(左)とラッパの斎藤匠社長(写真=陶山 勉)
UBICの武田秀樹CTO(左)とラッパの斎藤匠社長(写真=陶山 勉)

 一般的にAIは、自分で判断を下すために、大量のデータを事前に記憶させなければならないものが多い。このため、実践で使うために多くの時間とコストを要することになる。その点、キビットは独自のアルゴリズムとシミュレーション機能などを搭載することで、学習用データが少なくても正しい判断が導けるようになるという。

 「ほんの数件の学習用データを学ぶだけで、人間より正確な判断を下せるようになる。多くの顧客が、試用した段階で驚く」。UBICの武田秀樹・執行役員CTO(最高技術責任者)は、こう胸を張る。UBICはAI関連で43件の特許を取得している。

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