1円単位まで請求可能

 冒頭の幹事役の女性は「飲み会の精算って結構面倒くさい。細かい現金を持っていない子がいるし、あとで請求するのも『がめつい』って思われそうでちょっと気が引けるんです」と話す。

 現金での精算では困難な1円単位の正確な割り勘もスマホ操作だけでできるのも特徴。「ペイモのおかげで頻繁に女子会を開くようになっちゃった」と女性は笑う。

 エニーペイの代表取締役は、シリアルアントレプレナー(連続起業家)として知られる木村新司氏。2007年、広告配信のアトランティスを立ち上げ、その後グリーに売却。ニュースキュレーションアプリ「グノシー」の運営会社でも共同代表を務めた経験を持つ。

 そんな木村代表が個人間電子決済に注目したのは、「英語圏や中国、シンガポールではスマホで楽に支払えるサービスがあるのに、日本にないのはおかしい」と感じたのがきっかけだった。

 危機感もあった。「訪日中国人が増え、中国のアリババ集団の電子決済サービス『支付宝(アリペイ)』、テンセントの『微信支付(ウィチャットペイ)』などが日本でも使えるようになっている。それを日本人も使うようになったら結構危ないなと感じた」(木村代表)。店舗への支払いだけでなく、個人間決済のインフラまで海外勢に押さえられるのではないか。そんな懸念から2016年6月にエニーペイを立ち上げた。

連続起業家として知られる木村代表(写真中央)。個人間電子決済を日本に定着させようとしている

 だが、そこで法規制という高い壁が立ちはだかる。2010年の資金決済法の施行により、金融機関以外も個人間送金ができるようになった。ただし、資金移動業者として登録しなければならず、おカネの送り手と受け手は事前に運転免許証などを使った本人確認の審査が必要になる。不正送金を防ぐための規制だが、煩雑な手続きが伴うため、日本ではスマホを使った個人間送金サービスがほとんど浸透していない。

 さらに日本には、米国の市民IDのように手軽に本人確認できるシステムもない。2016年にマイナンバー制度が本格スタートしたが、電子決済で使えるほど使い勝手が良くないのが現状だ。

 逆風の中で木村代表が思いついたのが、個人間送金ではなく、個人に発生した「債務の支払い」に限定したサービスだった。あくまで飲食代という「債務」の支払いをエニーペイが代行する形を取れば、資金移動業者の登録も不要になる。

 このサービスについては弁護士や監督官庁とも事前に相談。現行法に抵触しないことを確認しているという。

 債務の支払いであることを明確にするため、レシートの撮影を義務付け、飲食店への支払い前に請求できないようにしている。ただ、この枠組みはあくまで暫定措置で、規制緩和が進めば個人間送金もサービス化する考えだ。

 壁は法規制だけではない。大野取締役は「日本は世界でも突出してATMの数が多い国で、現状に不便さを感じている人が少ない」と指摘する。だからこそ電子決済の利便性を知ってもらうために「まずはペイモを使ってもらうことに力を入れる」(大野取締役)戦略を打ち出している。