自動車から宝飾品まで、欧州勢が高級品市場を支配する業界は多い。日本製品は品質では評価が高くても、ブランド力で劣るというのが共通する構図だ。セイコーが欧州勢の牙城を崩すことができれば、それは日本企業の新たな成功モデルにもなる。

INTERVIEW
服部真二・セイコーホールディングス会長(セイコーウオッチ社長)に聞く
一貫生産強みに高級ブランドの一角を崩す
(写真=北山 宏一)
(写真=北山 宏一)

 セイコーの強みは「マニュファクチュール(自社で一貫生産できる企業)」であること。ムーブメントは機械式とクオーツ、2つを組み合わせた「スプリングドライブ」を生産している。これらにソーラーやGPS(全地球測位システム)などの機能を組み合わせて幅広い商品を提供できる。世界のどこにいても時刻が正確に分かる「アストロン」はその具体例の一つだろう。

 アストロンは非常にいい時計だし、海外でもとても売れている。ただしそれが最終的なゴールかと言われれば違う。

 やはり時計の市場ではスイスブランド、それも機械式が主流だ。「スマートウオッチ」のような分野に我々が力を入れるような状況ではない。セイコーは機械式の生産を止めていた時期もあったが、SII(セイコーインスツル)の技術者が技術を伝承してくれたり、図面が散逸しないようにしていてくれたことで、作り続けることが可能になった。

 これらの資産を生かし、欧州の時計メーカーに売り上げ規模などで追いつくことが我々の最終的なゴール。今後10年では難しいだろうが、一歩一歩進んでいく。

 今は日本市場の売り上げが約半分を占める。今後は、海外売り上げの比率をどんどん上げていきたい。具体的な目標は定めていないが、海外比率が7割程度にならないとだめだ。

 2020年をメドに欧州市場に機械式で食い込み、スイスのラグジュアリーブランドと呼ばれるメーカーの一角を崩す。これは、2016~18年度の中期経営計画にも盛り込んでいく。

 かつてセイコーはクオーツで世界を制覇したが、プラザ合意後の円高もあってクオーツは競争が激しくなり、コモディティー化した。そうした経緯から、欧米では中級ブランドのイメージがついている。

 これを払拭するために、欧米にブティックと呼ぶ高級品専門店を積極的に展開していく。ブティックには「グランドセイコー」はもちろん、3000万円する「ソヌリ」など超高価格の時計も置いている。ブティック展開には収益面以外の目的も大きい。

 2003年にセイコーウオッチの社長に就任してからいろいろあったが、ここ数年はセイコーHDも銀座の宝飾品店「和光」も黒字が定着し、社内の雰囲気も明るくなってきた。「時代とハートを動かすセイコー」というスローガンを実現するため、もっと楽しい会社に変えていきたい。(談)