欧州市場などで地位を築くにはM&A(合併・買収)という方法もある。シチズンHDは2008年に米ブローバ、2012年にスイスのプロサーホールディングを買収。2月15日の会見でも今後3年で買収に300億~400億円を投じる考えを示している。

M&Aより「SEIKO」で勝負

 一方のセイコーは買収によるブランドの取得には消極的だ。「グランドセイコーで世界に打って出る」(服部会長)という方針は揺るがない。

 欧米で「SEIKO」の名前は知られているが、現状は中級ブランドのイメージにとどまっており、すぐに100万円超えの価格帯で戦うのは難しい。スイス勢と戦うには、高級ブランドとして認知してもらう必要がある。

「セイコーブティック」を2018年100店舗に増やし、スイス勢攻略を目指す
●海外における店舗展開
「セイコーブティック」を2018年100店舗に増やし、スイス勢攻略を目指す<br />●海外における店舗展開
2015年7月にオープンした「セイコーブティック フランクフルト」

 欧州はロレックスや、オメガなどを傘下に持つスウォッチグループ、「IWC」や「カルティエ」などのリシュモングループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループのお膝元。

 セイコーウオッチの高橋修司CBO(チーフブランディングオフィサー)は、「時計の本場は欧州。ここさえ取れれば、米国や中国などでも売り上げがついてくる」と言い切る。

 注力しているのが、海外主要都市への積極的な出店だ。高級品だけを扱う店舗を「ブティック」と名付け、2004年のパリを皮切りに、2014年は米ニューヨーク、2015年はドイツ・フランクフルト、ロシア・モスクワ、東京・銀座などにオープンさせている。欧州を中心に現在の63店舗から、2018年には100店舗まで拡大する計画を掲げる。

 消費者との接点を増やし、積極的なマーケティングを仕掛ける。日本で成功した戦略を海外でも展開する構えだ。

 海外市場ではプロテニス選手のノバク・ジョコビッチ氏を広告塔に据えている。それだけでなく、スイスの時計雑誌の記者を日本に招待して技術力の高さを伝えたり、各国の販売会社へ積極的に製品の情報提供をしたりするなど、地道な活動も続けている。

アジア企業で初の受賞

 欧州でブランドが浸透する兆しも見え始めた。2014年、グランドセイコーのあるモデルが、アジアの時計メーカーとしては初めてジュネーブ時計グランプリの8000スイスフラン(約94万円)以下の部門で賞を獲得したのだ。

 外部環境でも追い風が吹いている。2015年のスイスの時計輸出額は6年ぶりの前年割れとなった。スイスフランの急騰で一部ブランドが値上げした影響が出た。それでも「ブランドは一朝一夕に向上しないし、まだ欧州の牙城は高い」と高橋CBOは気を引き締める。