それは、藤田氏が20年にわたって試行錯誤を繰り返しながら、AbemaTVのような新規事業は経営トップが担当し、既存事業はそれぞれの担当役員による「集団指導体制」で運営するという役割分担を明確にしてきたからだ。

3人のキーマンが藤田社長を支える
●サイバーエージェントの主要役員陣
  • 創業メンバーで、藤田氏の片腕として成長をけん引。ゲーム事業を所管。(写真=竹井 俊晴)
  • 新卒採用1期生。広告事業を中心にキャリアを積み、現在同事業を所管。(写真=竹井 俊晴)
  • 住友商事から創業直後のサイバーエージェントに転身。一貫して財務・経営管理を所管。

 現在、集団指導体制の核となっているのが、日高裕介副社長、岡本保朗専務、中山豪常務の3人。創業メンバーの一人である日高氏はゲーム事業を統括し、新卒採用1期生である岡本氏が広告事業をまとめる。大手商社から創業直後に参画してきた中山氏は全体の経営管理や財務を担っている。

 岡本氏は「新規事業は藤田が徹底してやる一方、既存事業では権限委譲がしっかりなされている。広告事業に細かく口を出されることはない」と話す。

 ブログとスマホという過去2度の成功体験をなぞるかのように、AbemaTVには株式市場も現時点では一定の評価を与えている。同社の株価は今年3月に入り、株式分割調整後の実質的な上場以来高値を更新している。

 ただし、今回の挑戦に立ちはだかるハードルはこれまでと比べても格段に高い。その理由は大きく2つある。

立ちはだかる「ネットフリックス」

 一つはビジネスモデルだ。AbemaTVの視聴は基本的に無料で、収益源は企業などが出稿する広告に頼っている。藤田氏は「週間視聴者数が1000万人を超えれば、広告単価が上がり広告出稿量も増えるポジティブなサイクルに入る」と説明。週間視聴者数は直近の半年は400万〜700万人規模で、当面はこの1000万人が目標となる。

 ただ、週間視聴者1000万人を突破しても、それはゴールではない。本当に収益化の道筋が開けるかは未知数だ。

 投資家向けの決算説明会などで収益化の具体的なロードマップを明確に示していないこともあり、大手証券会社のアナリストは、「本当に稼げる事業になるのか、なんとも判断できない。正直なところ、収益化は難しいのではないか」と話す。既存のテレビ業界からも、サイバーエージェントの手法に対して懐疑的な声は少なくない。

 そしてもう一つが、藤田氏が目指すような大きな影響力を持つプラットフォームに、果たしてAbemaTVがなれるのかという疑問だ。

 すでに動画配信の分野では、米ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムの「プライム・ビデオ」が、日本でも先行して存在感を高めている。ネットフリックスは、全世界で1億人超の会員を持ち、巨費を投じてオリジナルドラマを制作。リード・ヘイスティングスCEO(最高経営責任者)は、18年の会費収入が約1兆5000億円となる見通しで、動画制作に約8000億円を投じる計画を明らかにしている。

 アマゾンも人気タレントなどを起用した独自のコンテンツの制作に注力。これら海外勢の資金力は、サイバーエージェントをはるかにしのぐ。

 さらに、米グーグルの「YouTube(ユーチューブ)」を筆頭に、無料の動画サイトも数多く存在する。世界の有力プレーヤーが日本市場の攻略に力を注ぎ、消費者の動画視聴時間を奪い合う構図はより鮮明になっている。