例えば地震や洪水などの自然災害が発生した場合。どの製品のサプライチェーンに影響があるか、その代替部品はどこから調達できるかなどの情報をリアルタイムで把握できる。急な環境変化に対応しやすいほか、新しい生産品目が次々に増える工場も、管理センターの指示のもと混乱なく生産を続けることができる。

トランプ政権の影響に注目

 足元では、米国への雇用回帰を訴えるトランプ米大統領の政策が同社の生産体制にどのような影響を与えるのかが注目を集める。同社は米国に9カ所の工場を持ち、過去4年間で3億ドル(約336億円)以上を投資。EMSとして米国内で最大規模の生産能力を持つ。

 現時点で米国での雇用拡大や工場の増強は未定。「グローバルな生産体制が前提で、1カ国に拠点を集中させる考えはない」(クリストファー・コリアーCFO=最高財務責任者)とする。しかし、メキシコにも5カ所の工場があり、今後は生産体制の見直しを求められる可能性がある。

 EMSでは、シャープをのみ込むまでに成長した鴻海に光が当たりがちだ。そんな中でフレクストロニクスの戦略転換は、IoT化とベンチャーの台頭で、ものづくりに次の変化の波が起きていることを示唆する。同じような製品を大量生産するモデルで成長してきた日本メーカーも、この波を見過ごしてはいけないはずだ。

INTERVIEW
マイク・マクナマラCEO(最高経営責任者)に聞く
もはやEMSではない

 40年以上続けたビジネスモデルを転換するために、2015年から「スケッチ・トゥー・スケール」を掲げています。商品のイメージを描いただけのスケッチの段階から、スケール(量産)までをサポートする、という意味です。顧客が持つたくさんのアイデアを、商品化にまで持っていくのが私たちの仕事です。

 以前のようにエレクトロニクスに偏った受託製造にはこだわりません。社内外に発信するときは、社名の(「電子機器」を彷彿させる)「tronics」を外し、「flex」を使うようにしました。ロゴも変更して生まれ変わりました。既に「EMS」という業種の枠には当てはまりません。

 足元では顧客の多様化を加速しています。EMSは一部の大手メーカーに依存しがちで、1社の業績の変化に売上高が連動するリスクが高いことが課題でした。現在の実績を見ると、上位10社の顧客が売上高の46%を占めており、1社で10%を超える顧客はいません。スタートアップのような小さなビジネスを増やしていきたいと思っています。

 現在、受託製造を手掛ける分野は13にまで広がっています。新たに参入したのが今後9兆ドルの市場になると言われる建設・建築業界です。もちろん住宅そのものを作るわけではありません。当社に強みがあるサプライチェーンの管理ノウハウなどを生かし、建築業界向けにクラウドベースの設計ソリューションを提供していきます。最終製品の製造だけでなく、こうした設計・開発部門向け支援ツールの販売も今後増えていくでしょう。

 米国には合計面積が600万平方フィート(56万平方メートル)以上に達する複数の拠点があります。製造から流通、サービスまで、あらゆる産業に対応できる体制が15州に備えられています。米国への生産回帰の動きで、顧客が今後、米国で新しいサプライチェーンを構築する際に、非常に有利な立場にいると考えています。

 急成長したEMSは、今、正念場を迎えています。ライバルの戦略を追いかけるのか、それとも業界の枠から一歩飛び出し、全く新しいビジネスモデルを自ら作り上げるか。リスクもありますが、我々は後者を選びました。技術革新や時代の変化により、世界が一変する「Disruption(破壊)」の時代です。立ち止まって、考えている時間はありません。(談)

(日経ビジネス2017年2月20日号より転載)

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