台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と競うEMS(電子機器の受託製造サービス)大手が変身を急いでいる。大量生産、電子機器中心、労働集約型といった従来のEMSの概念を覆すような構造改革を加速している。ものづくりベンチャーからスポーツ用品メーカーまで、IoT時代を見据えた新分野を開拓して成長を目指す。
サンフランシスコにある工場さながらの「インベンションセンター」。ベンチャー企業が出入りし、ミニ生産ラインで量産技術を磨く(写真=工場・ジャケット:林 幸一郎)

 米国サンフランシスコ。多くの人が行き交うダウンタウンのど真ん中に、レンガ造りのその建物はあった。中には小さな生産ラインが3本敷かれており、数人の男性が電動スケートボードやプリンターを組み立てている。3D(3次元)プリンターや検査装置、射出成型機などの最新設備を完備。フロアあたりの床面積は約600平方メートルと決して広くないが、そこは立派な“工場”だった(上の写真)。

 運営するのは、シンガポールに本社をおくフレクストロニクス。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と競合するEMS(電子機器の受託製造サービス)の大手メーカーだ。1969年創業の同社は、世界100カ所にある大規模工場を活用し、サーバーやゲーム、スマートフォン(スマホ)など電子機器の受託製造で成長してきた。2016年3月期の売上高は約244億ドル(約2兆7000億円)に達する知られざる巨大企業だ。

中華圏の顧客を取り込み台湾勢が躍進
●大手EMSの売上高規模(2016年)
注:1台湾ドル=3.61円、1ドル=112.1円で換算。緯創資通は2015年12月期、フレクストロニクスは2016年3月期

 今、同社は47年間続けてきた「EMS」のビジネスモデルから脱却しようとしている。大量生産、労働集約型、電子機器が主力──。こうした従来のEMSのイメージを全く覆す、新しい企業体への変革を急ぐ。サンフランシスコの「ミニ工場」は、まさにその改革を体現する場所だ。

従来のモデルでは生き残れない

 EMSは少ない品種の製品の大量生産を得意とし、規模のメリットを生かしたコスト競争力を実現して、2000年代に急成長してきた。最大手は昨年シャープを買収した台湾の鴻海。フレクストロニクスは2009年3月期まで売上高で鴻海に次ぐ業界2位だった。米マイクロソフトのゲーム機「Xbox」をはじめ、大手メーカーの携帯電話などを受注し、メガEMSの一社として知られていた。

 しかし、台湾や中国を中心に続々とEMSの新興勢力が台頭。彼らは成長著しい中華圏の顧客を着実に取り込んで規模を拡大してきた。顧客獲得競争に苦しんだフレクストロニクスの売上高は2010年3月期以降横ばいが続いており、台湾や中国のEMSと比べると伸びは鈍い。