木村尚子社長は、専門知識ゼロの状態からクレヨン開発に挑戦した

 アイデアの種は思わぬところにあった。食事の準備でホウレンソウをゆでたとき、お湯ににじみ出る緑色の鮮やかさに気付いた。引き込まれるような色合い。青森の野菜をクレヨンの原料にすれば、親子で親しめる商品になる。事業の構想は固まった。

 原料探しのために県内の野菜農家を訪ねた際に、もう一つの事業のヒントに出合った。収穫後の畑の隅に置かれていたのは、出荷されない規格外の野菜たち。「魅力的な色をしている。これも原料になる」と木村社長は考えた。他にも出荷前に切り取られるキャベツの一番外側の葉やネギの葉、ジュースを絞った後のヤマブドウの残りかすなど、次々と農家から買い取る約束を取り付けた。県の産業技術センターから助成金を取得し、商品の開発を始めた。

 しかし、クレヨン製造のノウハウはゼロ。苦労したのが配合の割合。ライスワックスに乾燥させた野菜の粉末などを加える。色を鮮明に出そうと粉末を多くすると、出来上がったクレヨンはザラザラ、ぼそぼそとした固い描き心地になってしまう。品質を安定させるまで、3畳一間の小さな事務所で試行錯誤を繰り返した。

 製法が決まれば、次は量産の段階。製造を依頼したのは名古屋にあった町工場だった。昔ながらの手作りの製法を守っているため、小ロットでも注文可能で、野菜粉末など特殊な材料にも対応してくれた。

ニッチなギフト需要つかむ

DATA
mizuiro
2014年設立
本社 青森県青森市新町1丁目
8-12 2階
資本金 2600万円
社長 木村尚子
売上高 6000万円
(2017年8月期)
従業員数 7人
事業内容 「おやさいクレヨン」など文房具の商品企画・販売
ギフト需要で販売が拡大
●おやさいクレヨンの販売セット数

 商品の発売にこぎ着けたのは14年。素材の調達に手間がかかることなどから、10本セットで2000円(税抜き)と一般的なクレヨンに比べて価格は高めに設定した。

 野菜からは生み出せないピンクや青系の色は入っていない。半面、葉物野菜を多く材料としたため緑系の色が多いなど「クレヨンセットとして、色のバランスは整っていない」(木村社長)。しかし、野菜を活用したクレヨンはこれまでに無く、食育の一環としての利用も見込める。ギフト向けとしてニッチな需要があると考えた。

 読みは当たった。世界に類を見ないクレヨンへの反響は想定以上に大きかった。発売に先駆けて東京の展示会に出展した際、3日間でバイヤーなど1500人がブースを訪れ、用意した名刺とチラシが無くなった。初回生産の1000セットは2週間で売り切れた。

 14年度に2万セット、翌年度には3万セットと着実に販売は増えていった。季節ごとに種類の違う野菜などの素材で販売してきたが、16年6月からは通年で安定的に確保できる10色でスタンダードセットを発売した。野菜の8割は地元青森から調達している。

 評判は全国に広がり、「名産のカボスなどで九州版のクレヨンを作ってほしい」など、他府県の農家からも要望が舞い込んでくるようになった。

 海外のバイヤーの目にも留まり、中国や韓国、欧州でも販売が始まった。昨年末には、みちのく銀行が設立した「地域活性化ファンド」の第1号出資案件に選ばれ、3000万円を調達。さらなる海外展開に向け、ニューヨークでの見本市の出展費用などに充てる計画だ。

 「設立当初は会社を5年続けることが目標だった」と振り返る木村社長。当初3人だった従業員も7人に増え、18年8月期には売上高1億円を計画する規模にまで事業は拡大した。

 昨年11月に規格外リンゴなどから完全無添加のフリーズドライの菓子を発売。さらに今年3月には農産物を原料とした粘土玩具の新商品を発売する。「青森の魅力を発信しつつ、家族が楽しめる時間を生み出す商品を次々と作り続けたい」。木村社長の構想は大きく広がり始めている。