千葉県・ペリエ稲毛店を担当する植草禎統括ストア・ディレクターは、「自店の陳列をキャラバンに変えられるのは抵抗があった」と、振り返る。だが、「ものの1時間半で店内の雰囲気ががらりと変わり、どこが良くなったのか明確に分かった」(植草氏)。

 店を訪れた星﨑氏は、店員やキャラバン参加者を質問攻めにする。ミスをあげつらうためのものではない。「問いかけに答えようとする姿勢を根付かせることで、自発的に考え行動するきっかけにする」(星﨑氏)ためのものだ。

 その姿勢は星﨑氏が各店に出向くときだけでなく、社員が本社に集まる会議でも、徹底している。

 毎週月曜、東京・品川本社は慌ただしい。「アクション会議」と呼ばれる、トップ直轄の戦略会議があるからだ。

 店長以上と本社の各部門の担当者が中心だが、それ以外の誰でも参加可能。星﨑氏以外の参加者は途中で抜けることができるが、会議自体は議論が尽くされるまで終わらない。

 アクション会議では、個別社員の給料以外、経営に関する全ての情報、データが共有される。例えば、どの店舗でどの商品がどの程度売れ、それが販促策の実施でどう変化したのか、という定量的な変化を参加者全員が把握できるようにしている。

 それ以外にも、「歩行者が思わず手に取ってしまうティッシュ付きチラシの配り方」なども披露され、トップがいることによる適度な緊張感の中で、社員一人ひとりに共有されていく。

 この会議でも、星﨑氏自らが司会進行と書記を担当し、社員への問いかけ役に徹する。「その改善策は今日からできるんじゃないの?」「その数字、すぐ出せるでしょ。今日中に全店で共有してよ」──。終了時刻が午後10時を過ぎることもある。

技術を前面、安売り脱却

 星﨑氏が社員の意識改革に力を注いでいるのは、並行して、ビジネスモデルの大胆な転換に取り組んでいるからだ。過去の成功体験となっている量販店型のビジネスモデルから脱却するには、トップが掛け声をかけるだけでは足りない。現場で自ら考えて自発的に動ける社員が不可欠だった。

 ジンズなどのSPAがリーダーとなった市場でどのように生きるか。そこで考えたのが、メガネスーパーの顧客の7割を占めていた40代以上を改めて深掘りする戦略だ。

 同社はかつて、検眼の技術を磨くための学校を持っていたほど、「医療機器」としての眼鏡に関する技術には定評があった。どうしても成長優先で、大量販売と安売りに走った時期があったが、改めていま専門技術の重要性を捉え直そうとしているのだ。

看板の変化にも試行錯誤の跡
●メガネスーパーの歴代看板
2011年以前の看板(上)と現在の看板(中)。下は高田馬場本店で採用されている最新版の看板。「アイケア」のロゴがある

 安売りしなくても成長できる──。そう確信を持てた。スマートフォンの普及による視力低下や、高齢化に伴う老眼の増加は社会的な問題だ。そこに需要が見込めると踏んで、14年、「アイケアカンパニー」を宣言。検眼を中心としたアイケアを徹底する、という姿勢を内外に示した。

 メガネスーパーの検眼は約30項目と、競合他社と比べてはるかに多いという。両眼視機能検査など高度な検査もできる。無料で実施していた検査を、あえて有料にした。購入した眼鏡の度数が合わない場合は、半年以内なら無料で何度でも調整に応じる。

 17年11月にオープンした高田馬場本店は「アイケア」の象徴だ。同店での検査項目は一般店よりもさらに多い40項目。店内にはリラクゼーションルームを設けた。検眼前に目の周りのコリをほぐすことで視力を回復し、検査の精度を高めるためだ。

 同店で眼鏡を購入した50代の女性は、「5万円したけれど、購入後に3度も調整に応じてくれた。丁寧なケアに満足したので、その後もう1本買ってしまった」と話す。

 現在、メガネスーパーの客単価は3万5000円。経営難の時代の約2倍で、かつての単価ピークだった00年前後と比べても、高い水準となっている。