「居心地の良さ」で顧客に密着

 偏光板事業は2000年代後半、当時の主力だった液晶テレビ向けで世界的な需要減に直面した。液晶テレビメーカーによる偏光板の納入価格引き下げ圧力が高まり、生産効率の改善だけでは対応できない状況まで追い込まれた。

 試行錯誤の上、たどり着いた対応策が「ロールトゥパネル」と呼ばれる仕組み。偏光板を単に納入するのではなく、取引先の液晶パネルメーカーの工場で、日東電工がパネルに貼る工程から設備、人員、在庫のコントロールまでを受け持つと提案した。

モノとサービスを組み合わせて需要を開拓
●液晶テレビ向け偏光板の事業モデル「ロールトゥパネル」の仕組み

 この仕組みを導入した液晶パネルメーカーと日東電工は切っても切れぬ関係になった。しかも相手先工場に深く入り込んでいるので、生産計画や技術上の課題、今後の製品開発の方向性まで把握できるようになった。

 ひとたび顧客と居心地の良い関係を構築できれば、そのメリットは大きい。液晶パネルはその後、テレビからスマホへと需要が移った。既にテレビ向けで高シェアを確保していた日東電工は、その波にスムーズに乗った。会社側は明らかにしていないが、米アップル向けの需要も独占していると見られる。

 居心地の良い関係は摩擦の中から生まれる。2008年、新型の超薄型偏光板を、これまで取引のなかった液晶パネルメーカーに納入し始めた頃、歩留まりが当初の想定より大幅に悪化した時期が続いた。大赤字を垂れ流し、一時は撤退も検討された。だが最終的に、偏光板の厚みを従来よりも若干厚くすることを相手先に了承してもらい事業を一気に黒字化させた。「(新しい偏光板を組み込む)パネルの完成形を改めて分析させてもらうと、厚みの条件を緩くしても完成品には影響がないことが分かった。相手先と一体になれたからこそ、黒字化できた」と当時の担当者は振り返る。

従来とは勝手が違う挑戦

 「まだまだ新しいテーマが足りない」。冒頭のイベントで締めの挨拶に登壇した髙﨑社長はこう社員に発破をかけた。

 スマホ市場がグローバルに急拡大した影響で、日東電工の収益の7割以上は偏光板やITOフィルムなどオプトロニクス事業が占めている。ただスマホ市場の成長は鈍化しており、「業績への影響が懸念されている」(シティグループ証券の池田篤アナリスト)。

 新たな収益の柱づくりは急務だ。期待されているのは、社内の技術を自動車向けに集中させて需要を探っているカーエレクトロニクス事業と、不治の病を治そうと取り組む製薬事業だ。

新技術と新用途を模索し、新需要を作る
●時代ごとの「三新活動」の具体例

 カーエレクトロニクス事業では、昨年7月に愛知県豊橋市の拠点にある「オートモーティブ・テクニカル・センター」を拡充。自動車メーカーの完成車を置き、騒音や気密性などを計測できるようにした。「評価技術は直接利益は生まないが、我々の製品がどう貢献できるか、完成車メーカーと一緒に考えられる」(梅原俊志・取締役)。これまで培ってきた顧客密着のノウハウをカーエレクトロニクス事業でも生かしている。