給与明細よりネット履歴

 東南アジアは金融業にとって実に難しい地域だった。住民の多くは銀行口座を持たず、保有資産の把握が難しい。給与も正しく申告されないケースが多く、与信管理は困難を極めた。

 そこで東京センチュリーが着目したのが、スマホとAI(人工知能)の連携。金融サービスの仕組みはこうだ。

 住民の多くはスマホを保有しており、そこに個人情報が集約されている。スマホを使ったネット通販の利用状況を把握し、支払い漏れがないか、どの価格帯の商品を買ってきたかといった履歴を集める。

 さらに、SNS(交流サイト)の投稿を分析、仕事や友人関係などを把握。集めた個人情報をAIで分析し、個人の与信力を算出する。個人がネット通販を利用する際、決済画面で「あなたには、いくらまで貸せます」と表示して融資につなげる。「中間層はスマホで全ての決済をしている。新サービスは金融の概念を変える可能性もある」とインドネシア現地法人の本田誠社長は語る。

 東京センチュリーの自由さは、銀行との、つかず離れずの絶妙な距離感で成り立っている。競合の銀行系リース会社は、銀行による出資比率が2桁を超え、銀行法の制約を受け事業投資などが制約されることが多い。

新事業のノウハウ獲得が急務

 東京センチュリーの場合、みずほ銀行の出資は4%台にとどまり、太陽光発電事業への参入などが可能となった。

 一方、みずほ銀行からの資金調達ルートは維持されており、独立系リース会社のオリックスなどと比べ、調達金利を低く抑えられるメリットを持つ。

 自由な金融業を目指し、事業運営などに軸足を移してきた東京センチュリー。しかし、新規の投資案件が多く、様々な事業に関してノウハウを集積している段階とも見て取れる。より早く事業に関する知見を高め、市況変動時にも対応できる力を付けるかが今後は焦点となってくる。

INTERVIEW
浅田俊一社長に聞く
金融・商社・メーカーの中間目指す

 日本でリース会社は銀行系列が多く、金融業の一部と捉えられている。一方、リース業が生まれた米国では、サービス業と認識されている。顧客企業が装置や設備を導入するのを金融面でサポートするだけでなく、自ら事業も手掛けるのが一般的だ。

 当社も、エネルギー事業に参画するなど、金融の枠にはまらない会社になっている。金融と商社、メーカーという3つの業態の中間地点にある会社だと考えている。「『金融×サービス×事業』の新領域へ」という標語を掲げている。

 金融緩和政策で、市場に大量のマネーが出回っている状況では、融資で得られるマージンは非常に薄い。金融業全般にとって厳しい環境となっている。

(写真=都築 雅人)
(写真=都築 雅人)

 従来型のリース事業で与信リスクを取る。自ら手掛ける事業を拡大して、事業リスクを増やす。この2つの方法でしか、収益を拡大することはできない。

 自動車や航空機などは生活や経済活動にとって必需品で、需要は安定して伸びている。特に航空機は今後20年間で世界の機体数が現在の2倍に増える有望市場だ。今後も注力していく。

 米CITとの航空機リース事業の提携期間は3年より短かった。この分野はメンテナンスのノウハウ獲得や国際的ネットワーク作りに最低5~10年の経験が必要。当社には新しいパートナーが必要と認識している。交渉は進んでいるので、近いうちに発表できると思う。

 東南アジアでは、まさに金融革命が起きている。東南アジアで配車サービス最大手のグラブ(シンガポール)と提携した。運転履歴や顧客からの評価などの情報を集めることで、ドライバーへの与信が簡単にできる。オートリースなどに結びつけられると想定している。東南アジアは経済が成長し、金利を高く設定できる地域なので、十分ビジネスターゲットになると見ている。(談)

(日経ビジネス2017年2月13日号より転載)