しかし、日本企業が海外へ生産拠点をシフトする中で、国内の設備投資は伸びない。リース事業協会によると、2015年度の国内リース取扱高は5兆円強と、最盛期の1991年度(8.8兆円)に比べ4割も減少している。成長に向けて東京センチュリーは新たな事業展開を進める必要に迫られていた。
現在の東京センチュリーは2009年、日本勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)系の東京リースと、伊藤忠商事と旧第一銀行(現みずほFG)系のセンチュリー・リーシング・システムが合併して誕生した。合併当時からトップを務める浅田社長が経営改革を進め、国内リース事業が全社売上高に占める割合を、合併当初の81%から48%まで引き下げている。
●事業別の資産残高

エネルギー関連ビジネスと同様、需要拡大が見込めると見定めた分野には徹底して経営資源を投入するのが東京センチュリーの流儀だ。
その典型が航空機事業。2012年にLCC(格安航空会社)のジェットスター・ジャパンへ出資したのを皮切りに、同年に米国の航空機部品会社、GAテレシスを持ち分法適用会社に組み入れるなど、次々と投資を実行している。
2014年には米金融グループCITと航空機リースの合弁会社を立ち上げた。しかしCITは米国の金融規制などの理由で航空関連事業を切り離し、中国企業に売却することとなる。これにより事業拡大のペースは一旦緩むが、「2017年3月期中には新しいパートナーと提携できそう」と浅田社長は強気の姿勢を貫く。
国内で労働力不足が問題化する中、ロボット事業にも素早く乗り出した。川崎重工業と提携し、作業用ロボット「duAro(デュアロ)」を人手不足で悩む中小企業にリースするサービスを昨年開始した。

訪日観光客の増加にも目をつける。ニッポンレンタカーサービスを2013年に子会社化し、インバウンド需要を取り込んでいる。北海道の千歳空港営業所では、道路標識を説明する英語パンフレットを用意。予約ホームページは英語や韓国語、中国語に対応した。
外国人利用者は昨年12月に約400組と1年前に比べて8割増えた。アジア客が中心で、「ソフト面での訪日客のニーズを取り込めた」(浅田社長)。さらには、これら経験を生かし、訪日する富裕層を想定した高級リゾートホテルの展開も九州で計画している。
積極経営の効果は業績に表れている。2016年3月期まで7期連続最高益で、今期の連結経常利益も前期比6%増の720億円となる見通し。株価も2009年4月の合併から6倍以上に伸びた。マイナス金利で苦しむメガバンクが同期間で2割程度しか伸びていない点と比べ、東京センチュリーの成長ぶりが分かる。
●東京センチュリーとメガバンクの株価推移

その東京センチュリーが新事業に取り組んでいる。舞台はインドネシアだ。「アジア発の金融改革をつかみ取りたい」と浅田社長は意気込む。
昨年11月、現地の大手財閥リッポー・グループと提携すると発表。2017年中にもスマートフォン(スマホ)を介した金融サービスを始める計画だ。
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