「30分健康体操」の可能性

 既存のサービス業種で、新業態を開発する──。成熟したかに見えるサービス事業を深掘りし、そこから新しい商機を生み出していくコシダカのやり方は、カラオケ事業以外の事業にも通じている。代表例は、子会社のカーブスジャパンを通じて展開しているフィットネス事業だ。

 カーブスとは、米国で生まれた女性に特化した健康体操教室の仕組みで、今や世界80カ国で展開されているフィットネスの新業態だ。

 教室の中には円を描くように12種類のフィットネスマシンが並んでいる。利用者は好きな時間に教室に行き、空いているマシンから始めて12のマシンを順番に回る。2周続けると終了で、所要時間は準備体操を含めて約30分だ。

 短時間で有酸素運動や筋力トレーニングができるという手軽さが受けて、2005年の開業以降、会員数はシニアを中心に74万人、店舗数は1648と急増している。

 コシダカはこのカーブスの将来性に目を付け、2008年にベンチャー・リンクから20億円で買収、今や売上高186億円を稼ぐ事業にまで育てている。店舗数も買収時の約700店から1648店と倍以上に増えた。

 これまでもジムやフィットネスなど、女性が身体を動かす場所はあったものの、シニアの女性には何となく行きづらい場所だった。カーブスは1回30分という手軽さに加えて、買い物や用事を済ませたついでに立ち寄ることができる。住宅街やショッピングセンターの立地が多いからだ。

 カーブスを運営するのに必要な面積は、100~130平方メートル程度。出店コストもフィットネスクラブの約10分の1で済む点が、より主婦層の生活圏に密着した出店を可能にしている。主婦の口コミで効果が広がるため広告宣伝費も抑えられる。

 運動習慣を手軽に身につけられるとあって、自治体から過疎地への出店オファーも相次いでいる。2015年には、鳥取県大山町が実施する地域課題解決に向けた地方創生事業にも参画した。通常は人口4万人の商圏に出店しないと採算が取れない中、人口1万7000人の大山町にあえて出店し、地域女性住民の健康増進、体力アップを通じた「転倒防止」「認知症予防」といった取り組みに貢献している。

 自治体が有線放送や広報などを通じて会員の集客に協力したため、会員数は人口1万7000人でありながら約500人を確保した。自治体とタッグを組むことで、より広範な地域への出店が可能になりそうだ。

 自治体にとってもメリットがある。民間企業を使って、運動習慣を身につけてもらえば、長期で見ると医療費の削減につながるからだ。しかも、財政負担は一切ない。腰高社長は「大山町での健康増進活動をブラッシュアップさせ、仕組みを確立できれば、他の地域でも展開していきたい」と話す。

既存業種の「変化球」で成長する
●コシダカホールディングスの事業内容

「安近短」が共通点

 腰高社長の頭の中にあるのは、「安近短」型のレジャーの追求だ。少子高齢化や長引く景気低迷など、社会のマイナス要因を受けて、日本人の余暇の過ごし方や娯楽の楽しみ方も以前に比べて費用を抑える傾向にある。

 カラオケもカーブスも、すべて「安近短」をキーワードに発展してきた。2010年に進出した温浴事業も、安近短のトレンドが続くと見込んで始めたものだ。カラオケ事業で培った「居抜き出店」のノウハウを温浴事業でも応用し、閉店した施設跡に入り、全国で5店舗「まねきの湯」などを展開している。

 コシダカには、創業以来のポリシーがある。「安全安心」「リーズナブル」「フレンドリー」だ。清潔感と価格面での魅力、接客に注力することを通して付加価値を創出し、お客様に喜んでもらうサービスを展開できれば、企業としての存在価値が上がるという自負がある。今後も生活に密着した事業で「有りそうで無かった」サービスをいち早く提供して、成長余地を広げていくだろう。