生保は「3強」時代へ

 生命保険協会によると、2015年度の個人保険の市場規模(保有契約高ベース)は858兆円。ここ10年は保障内容を細分化した商品が増えたため契約件数は増えているが、規模そのものはピークだった1996年度と比べて4割以上減った。国内の人口減少は確実で、この傾向が変わる可能性は低い。

市場規模はピーク時から4割以上減っている
●個人保険全体の契約状況
市場規模はピーク時から4割以上減っている<br />●個人保険全体の契約状況
出所:生命保険協会

 加えて業界内の競争は激化の一途をたどっている。国内生保は長らく、日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の大手4社体制と言われてきた。しかし、その構図は様変わりしつつある。きっかけは、銀行窓口を通じた保険販売と海外M&A(合併・買収)で成功した第一生命が急成長したこと。そして事実上の国有企業だったかんぽ生命保険が昨秋に株式上場したことだ。

 日本生命は保険料等収入(売上高)で首位を維持しているが、2位の第一生命と3位のかんぽ生命が急速に接近している。かんぽ生命を含む日本郵政グループは20万人超の職員と2万の郵便局を抱え、営業力に定評がある。

上位3社の競争が激化する
●大手生保の業績
上位3社の競争が激化する<br />●大手生保の業績
注:2016年3月期

 民業圧迫を避けるため保険商品の開発が制限されており、高コスト体質なこともあって単独では脅威になりにくい。しかし、第一生命が商品開発に手を貸すなどして関係を深めれば、営業力との相乗効果で大きな脅威となる。生保業界内でパイの奪い合いが激化するのは必至だ。

<b>日本生命はニトリホールディングス(上)やNTTドコモと提携し販売網を広げている</b>(写真=上:朝日新聞社)
日本生命はニトリホールディングス(上)やNTTドコモと提携し販売網を広げている(写真=上:朝日新聞社)

 日本生命を営業強化に駆り立てる原因はほかにもある。人手不足が深刻化、他業態も含めた人材獲得合戦が激化しており、せっかく入ってきた職員に可能な限り長く働いてもらう環境を作ることが必要不可欠となっている。さらに「顧客となりそうな人のオフィスに入り込んでお菓子を配りながら、契約を取る」といった、昔ながらの営業が通用しなくなっているという事情もある。

 「1つの契約を頂くまでに、1年かけることはざらですよ」。日本生命川崎駅前営業部の山岡由佳さん(56歳)はそう話す。山岡さんは2015年の営業成績で全営業職員の頂点に立った。名刺には、世界70カ国・地域の保険会社でトップクラスの成績優秀者しか加入できないMDRT(ミリオン・ダラー・ラウンド・テーブル)会員の証しが記載されており、その実績を物語る。

高機能端末でボトムアップ

 山岡さんが保険の世界に飛び込んだのは約20年前、37歳の時だ。短大を卒業して公務員となったが、すぐに結婚して退職したため、2人の娘を抱える典型的な専業主婦だった。「入社からしばらく成績が振るわず、辞め時を考えながら働いていた」と言う。

 追い打ちをかけたのが2005年に施行された個人情報保護法だ。オフィスへの出入りが難しくなるなど、環境はどんどん不利に傾いていった。

 「チャンスが少なくなる中で、とにかくお客様と接触する機会を増やす必要があった」。山岡さんが輝かしい成績を残す一助となったのが、2012年に導入された営業端末「REVO」だ。

 REVOは契約に必要な手続きをペーパーレス化したシステム。当時、国内大手生保では珍しい“秘密兵器”だった。営業職員は事務作業が減ったことでできた時間を、手紙による呼びかけなどに振り向けられるようになった。山岡さんは「若い職員ほどREVOを簡単に使いこなすので、教えてもらっています」と笑うが、その一方でこれまでに1000通以上の手紙をしたためた。

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