働き盛りの女性に多い乳がん
●女性の年齢階級別乳がん罹患率
出所:国立がん研究センター

 そこでグローウィングが採ったのが、ホスピタリティーを最重要視する戦略だ。店舗は美容室のような明るい雰囲気にして、ファッション性が高くおしゃれを楽しめるような商品をそろえる。スタッフの多くは、美容師資格を持つと同時に、乳がんを正しく理解し、啓蒙啓発活動に携わる「ピンクリボンアドバイザー」の認定試験に合格している。各店舗にはAED(自動体外式除細動器)を設置するなど、「万が一」に備える体制を整えている。

オーガニック素材が評判

 グローウィングはここ5年、毎年1.5倍のペースで売り上げが伸びている。今後は全都道府県に店舗をオープンさせる予定だ。ファッション性の高さだけではなく、病状に応じたウィッグを提案していることも支持される理由だ。

 例えば、抗がん剤で頭髪が抜けてしまった人は、敏感肌になっていることが多く、肌と接する生地には特にストレスのない着け心地が求められる。

 そこで同社が1年間の開発期間を経て2014年に完成させたのがオーガニックコットンでできた生地の製品だ。

 他社の医療用ウィッグはナイロン製が多く、こすれて痛みを訴える人が多かった。同社だけが提供するオーガニックコットンの製品「ウィットン」で、飛躍的に着け心地が改善された。

 脱毛症の人は数年から数十年もウィッグを必要とする場合がある。それだけに、より自然な状態で、かつ日常の様々なシーンにも耐え得る製品が要求される。

 グローウィングの脱毛症用ウィッグは、生え際の自然さもさることながら、レース素材でも使用できる粘着力の強いテープによって、ジェットコースターに乗ってもずれないほどの密着性を誇る。

 脱毛症の人が友人と温泉旅行したい場合、お風呂でシャンプーのまねごとくらいはできるという。「これまで脱毛症のお子さんは、お風呂がネックで修学旅行に行くことがはばかられていた。わが社の製品なら入浴や就寝中も着けたままで過ごせる」(堀江社長)。

 毛髪も人工毛ではなく、過去に染めたことのない人毛(バージンヘア)を使うことで、本物と同じ質感を追求している。

 医療用かつらは健常者であれば無縁の商品だ。しかし、乳がんは、もはや誰しも罹患するリスクを抱える国民病になっている。いつ何時、ウィッグを本当に必要とする局面がくるかはわからない。その時の心強いパートナーがグローウィングと言える。

(日経ビジネス2016年2月8日号より転載)