日本ライフラインの営業担当者は業務範囲が広い。病院での営業活動にとどまらず、医師が集まる学会にも頻繁に顔を出し、医療現場のトレンドや次に輸入すべき製品情報を探る。時には営業が輸入元との契約交渉もこなす。取り扱い製品が病院で利用される際、手術室に入って製品の説明も買って出る。医師のニーズを現場から吸い上げ、開発陣に伝える役目も担っている。

 これほど広範囲に業務をこなす人材を安い賃金では採れない。そもそも日本ライフラインは外資系の大手医療機器メーカーの日本法人と競合しており、給与水準は高い。採用面で有利となるのは日本企業で上場企業であること。外資系の場合、本社が日本からの撤退を決めれば解雇されるリスクがある。

 給与体系も外資系と異なる。日本ライフラインは「所属部署の業績で賞与は変わるが、個人の成績はあまり反映されない。チームプレーを重視した評価制度を取っている」(鈴木厚宏副社長)。個人ノルマに追われる外資系にへきえきして転職してくる人も多い。

「無理に売らなくていい」

 「患者中心主義」も日本ライフラインの営業の特徴だ。単なる理念にとどまらない。営業が「自社の取り扱い製品より競合他社の製品の方が当該患者に適している」と判断した場合、潔く引き下がるべしという不文律がある。

 こういう場合、競合製品を扱う業者に連絡し、医師を紹介する。村瀬達也AST事業部長は「自分も過去に実践したし、部下にも同じことをさせる」と話す。敵に塩を送る行為について、鈴木社長は「患者さんの安全を優先することで医師にも信頼してもらえる。営業は無理に売らなくていい」と説明する。

 輸入商社としての強みを磨き、その強みを生かしてメーカーとしても成長を遂げた。弱点は内弁慶体質にある。自社製品の海外輸出にはこれまでも取り組んできたが、売上高に占める比率が1割を超えたことはない。

 カリスマ投資家の片山氏も「国内市場への依存度の高さが、株価が長く低迷してきた一因」と指摘する。今年からイタリアへ自社製品を輸出する。その先に見据える米国市場で成功すれば、日本ライフラインはグローバル企業に脱皮するだろう。

INTERVIEW
鈴木啓介社長に聞く
独自のビジネスモデルに安住しない

 大学を卒業して4年勤めた医療機器の商社から、増本武司会長らと一緒に独立したのが1981年です。その後10年余りは、日本で心臓病の治療が盛んになってきた時期と重なります。扱う製品を増やしながら規模を拡大。輸入商社である我々には、円高も追い風となりました。

 当初から医師との関係作りには力を入れてきました。国内外で開かれる主要な学会に営業はもちろん、私を含めて経営陣まで出席します。医師との信頼関係を築き、医療現場のニーズを知るためです。

 営業拠点はあと7~8支店は増やします。海外メーカーが日本に進出しようとしても、ゼロからここまでのネットワークを築くのは難しいでしょう。ここ数年は有力メーカーから商談を持ち込まれるようになりました。

(写真=都築 雅人)
(写真=都築 雅人)

 創業以来、新卒だけでなく同業もしくは異業種からの転職組という3つのルートで社員を採用してきました。知名度が低いと新卒だけでは社員を十分に集められません。同業からの転職者は即戦力です。新しい知識を必死に勉強する異業種組は、既存社員の刺激になります。

 現在は中国や韓国などで自社製品を売っているものの、海外の売上高比率は2~3%にとどまります。有力な販売代理店を見つけられたので、今年からイタリアへの輸出にも取り組みます。

 海外市場でシェアを取るには価格面で負けない製品を作ることが大切になります。最近では海外から輸入したいと思う製品と、社内で作ってみたいという製品が重なるようになりました。我々の技術力が向上してきた証拠なので、前向きな悩みです。

 いずれは米食品医薬品局(FDA)の認可を取って、世界最大の米国市場を目指します。「製造機能を持つ輸入商社」という独自のスタイルを変えるつもりはありませんが、社員にはそこに安住してほしくない。内向きの思想で働かないよう、外を意識させていきます。海外で自前工場を増やすつもりです。(談)

(日経ビジネス2017年1月30日号より転載)

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