世界の頭脳を集めて開発
こうした条件を一つひとつクリアできるのは、世界中から集まった優秀な技術者がいるからだ。滝野CEOが主導し、MUJINは国内外の大学や研究機関を訪問。「知能化ロボットで世界をリードする仕事をしないか」と、博士号を持つ研究者らを口説き続ける。
現在、MUJIN社員の30人弱のうち約6割は日本国外の出身者が占める。「中国一のロボットコンテストで優勝」「欧州のプログラミング大会で入賞常連」…。7カ国・地域からロボット工学の俊英が集まるMUJINのオフィスは、日本にいることを忘れるような、独特の雰囲気に満ちている。
もちろんファナックなどの大手メーカーも自ら考えて動く知能ロボットの開発を急いでいる。だが、MUJINのコントローラーは既に製品化済みで、多くのメーカーのロボットに対応していることが強みだ。デンソーや安川電機、三菱電機など多様なメーカーのロボットに後付けで実装できる。
「誰でも簡単に知能化ロボットを使える世界をつくりたい」。そう語る滝野CEOの脳裏には、携帯電話業界の教訓がある。携帯は、かつて日本メーカーの得意分野だった。だが米IT(情報技術)企業がソフトを主体に携帯のあり方を再定義し、日本勢は輝きを失った。なかでも米グーグルは汎用性の高い基本ソフト「アンドロイド」を武器に、業界で不動の地位を築いた。「ロボット大国ニッポンは今、携帯と同じ道をたどるか、もう一花咲かせられるかの瀬戸際に立っている」(滝野CEO)。
●MUJINの売上高推移

「MUJINインサイド」。コントローラーの納入に当たり、同社が顧客企業に配るステッカーにはそう書かれている。言うまでもなく、半導体で高いシェアを誇る米インテルを意識したものだ。インテルの半導体はその存在こそ地味だが、あらゆるブランドのパソコンに搭載可能。パソコンメーカーも、インテルを採用している事実が製品の性能の高さを示す売り文句になる。
長年の信頼や実績がモノをいう製造業に身を置きながら、MUJINは既に日産自動車やホンダ、コマツにキヤノンといった大手メーカーに納入を始めている。産業用ロボットの革新は、日本の基幹産業である製造業の革新を意味する。創業6年の新鋭企業は、その立役者となれるか。
(日経ビジネス2017年1月30日号より転載)
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