過去最高額でホテル取得

 観光ビジネスの歴史は浅いヒューリックが「高値でつかまされたのではないか」と陰で言われている物件がある。昨年5月、京浜急行電鉄から購入した東京・台場の大型ホテルだ。買収額は600億円超。日本企業が関わったホテル取引では最高額と言われている。同7月に「グランドニッコー東京 台場」として再オープンしたこのホテルの運営にヒューリックは関わらず、ホテルオークラの子会社に委託している。

 高値づかみとの批判を高橋常務は意に介さない。買収額は全体で600億円超だが、ヒューリックが今回取得したのは二百数十億円相当の土地部分のみ。建物部分は3年後に追加取得する形をとった。買取価格については既に合意しており、「収益性を高められれば、その分だけ利回りを上げられる」(高橋常務)との考えがあるからだ。

 実際、運営がオークラ子会社に切り替わってから平均客室単価は4000円程度上昇、2万円台に達した。建物の取得時点で費用を差し引いた利回りは、市場平均よりも高い5%台を見込む。

 運営を丸投げするのではなく、月に2、3回取締役クラスの会議を開き、両社で戦略を共有。レストランや客室の改装に新たに20億円かけることも決めた。建物部分を買い取るまでに、ゲートホテルで培った業務管理ノウハウを生かし、物件価値を最大限に高める。

 運営に関わるのはホテルだけではない。1泊10万円を超える高級旅館にも手を広げている。ここで狙うのは、余生を楽しむ裕福な高齢者だ。

 昨年2月、静岡県熱海市の高級旅館「ATAMI 海峯楼」を取得した。著名建築家・隈研吾氏が設計した建物で、客室は4部屋しかなく、眼下に海を見渡せる部屋付きの露天風呂が売りだ。これまでは旅館業のカトープレジャーグループ(東京都渋谷区)に運営を委託していたが、昨年10月以降、同社とヒューリックの合弁会社が引き継ぐことが決まった。

ヒューリックが取得した高級旅館「ATAMI 海峯楼」。海を眺めながら食事ができる(写真=村田 和聡)

 観光ビジネス開発部の松本健夫氏は「高級旅館のサービスは無形のもの。それを我々の経験で規範のような形に変え、他の旅館にも生かしていきたい」と話す。ヒューリックは2020年までに現在所有する旅館3件を含め、計10件の物件を取得する計画。旅館業に手を出す不動産会社は少なく、独自の運営ノウハウを確立し、先手を打つ。

 高齢者向け不動産事業では約30件の老人ホームを所有。病院の建て替えも手掛けている。