異色の銀行系不動産会社として急成長を遂げるヒューリック。銀行支店という一等地の有効活用で、三菱地所など財閥系企業を追う。次の一手として打ち出したのは観光・高齢者向け不動産ビジネス。秘策は吉と出るか。
(記事中の情報は、「日経ビジネス」2017年1月23日号に掲載した時点のものです)
●ヒューリックが重視する主なエリアと所有物件

午前6時、人もまばらな都心の繁華街にヒューリックの西浦三郎会長の姿があった。鋭い目つきで古びたオフィスビルをじっくりと見上げる。後日開かれた経営会議。このオフィスビルの買収が議論となると、西浦会長はすかさず切り出した。
「この物件のエントランスは表道路ではなく、脇道にある。今のテナントが出るタイミングで改築する手はあるけれど、それが難しければ、次のテナントを埋めるのに苦労するだろう」。議論の結果、買収は見送られた。
ヒューリックには年1000件以上の不動産物件が持ち込まれ、このうち出資額が30億円以上の物件について西浦会長が自ら下見に出かける。時間がないため、出勤前の早朝や夜の会合後に足を運ぶことも少なくない。
持ち込まれた物件は原則2日以内に取得の可否を決める。不動産管理・仲介業者から数多くの物件が持ち込まれるのは、この意思決定のスピードの速さによるところが大きい。
「不動産の風雲児」。業界でそう呼ばれるヒューリックが目覚ましい成長を遂げている。2012年に不動産中堅の昭栄と合併して以降、毎年、過去最高益を更新。直近の2015年12月期連結決算では営業利益が420億円、最終利益は336億円。2016年12月期もともに過去最高を再び塗り替える見通しだ。
「1兆円企業」の三井不動産や三菱地所、住友不動産に代表される財閥系不動産会社と比べ、ヒューリックの売り上げ規模は5分の1以下にすぎない。中堅クラスの野村不動産ホールディングスや東京建物よりも下回るが、時価総額は財閥系に次いで業界4位だ。
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