今では経営が自分の使命と自覚している。230人のスタッフを抱える企業の社長として、責任の重さも痛感する。今後は上場も視野に入れ、さらなる事業の拡大を図る。

 「プティパン」が家庭の食卓に並ぶ日常を目指し、啓蒙の意図を込めた試みも続ける。2013年には桐生市内の古民家を活用したイベントスペースで主婦向けのパン教室「暮らしの製パン所」を始めた。2015年1月には家庭向けに焼成冷凍パンとスープのセット販売を開始。同年12月にはイオン傘下でイオンリテールが経営する新業態のGMS(総合スーパー)「イオンスタイル御嶽山駅前店」(東京都大田区)の総菜売り場にスタイルブレッドの特設コーナーを構えた。

GMSのテコ入れに貢献も

 焼成冷凍パンの需要は引き続き拡大するだろう。主要な取引先であるホテル業界においては、インバウンド(訪日外国人客)の増加でいっそうの消費が見込まれる。朝食無料をうたい、集客の要にするビジネスホテルも増えている。種類が豊富な焼成冷凍パンはコストパフォーマンスの良さをアピールでき、歓迎されやすい。

 消費者の嗜好が多様化し、GMSや食品スーパーもより魅力的な売り場づくりを常に模索している。イオンは不振が続くGMSを立て直すべく、画一的な低価格から、地域ごとの客層に合わせた専門性の高い品揃えへと舵を切る。焼成冷凍のハード系パンは手間なく焼き立て感を出せる。流行に敏感なお客を抱える都心の店舗では重宝するはずだ。

 スタイルブレッドのビジネスモデルには追い風が吹く。田中社長の胸先では、誇れるパン作りと経営の採算、2つの天秤が揺れる。賛否の風向きも変わりやすい。

 目指す場所は遠いが、変わってはいない。視線の先にはかつて見た三ツ星の食卓が褪せぬ輝きをもって映し出されている。

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