焼き上げた後に冷凍する「焼成冷凍パン」を外食向けに製造・販売し、10期連続で増収を果たした。大手が敬遠するニッチな市場で、6つの“わがままな”需要に応え、これまでにない商品で支持を集める。老舗の製パン店が生み出したビジネスモデルは、職人と経営者、2つの顔を持つ4代目社長の葛藤に支えられている。
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営業手法からも分かるように、スタイルブレッドは卸を通さず直販する。業務用の食材としては珍しい。配送にはヤマト運輸か佐川急便の冷凍宅配便を使う。購入金額が5000円以上の場合、送料はスタイルブレッドが負担する。どの店もたいてい週1回、1週間分のパンをまとめて注文するため、1回の購入金額は平均1万円前後となる。
送料分のコストを吸収できるのは、需要の多い「プティパン」に特化したおかげだ。注文は「プティパン」の場合、20個入りの1袋単位で、配送用の1箱には4~5袋入る。従来の業務用フランスパンと比べると、1個当たりの単価は安いが、箱詰め後の1箱当たりのロット価格は高くなる。これで送料無料の直販を実現した。
冷凍パンでも在庫は持たない

工場は繁閑に応じて18~24時間稼働し、1日6~11万個を製造する。スタッフはパートが中心だ。工程を細分化し、1人が担当する作業を限り、技術を習得しやすくしている。熟練した職人でなくとも、慣れれば滞りなく生産できる。
賞味期限は120日に設定しているが、製造からほぼ1週間で売り切る。受注データやユーザー情報をもとに製造数を予測・指示する「ファクトリー・フレッシュ・システム」を導入し、在庫数を少なく抑えている。
寝かせる期間が短ければ、冷凍障害や冷凍焼けの危険が小さくなる。直販のメリットはここにある。卸の倉庫を通さない分、顧客に届けるまでの時間が短くなる。温度管理もしやすく、品質の維持を阻む死角が減る。
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