凸版印刷でコンテンツ事業を担当していた大石社長が起業したのは、2011年のこと。きっかけは、その3年前に電車で見かけた女性がカバンに付けていた携帯型のソーラー充電器だった。ちょうどその時、携帯電話のバッテリーが切れていた大石社長は「この女性からだったら高くても電気を買いたい」と考え、電気に特徴を付けるビジネスを思いついたという。

材料・送電技術も独自開発

 当初は試行錯誤の連続だった。例えば、2012年に開発した携帯型ソーラー充電器「てのひら発電『空野めぐみ』」。非接触ICチップ「FeliCa(フェリカ)」を内蔵し、携帯をかざすと、充電量に応じて専用ポイントを付与。エコグッズと交換したり、充電情報を友達とやりとりしたりする仕組みだったが、採算が合わず、量産化に至らなかった。

 「『空野めぐみ』でやりたかったことが電力小売り全面自由化で実現に近づいた。それが、個人が発電した電気を個人に受け渡すサービスの確立だ」(大石社長)。

 全面自由化で買い手側の環境は整いつつある。次の段階は、いかに売り手側となる個人を増やすかだ。

 名古屋市内にあるみんな電力の研究開発施設では、次世代エネルギー技術に関する様々な研究が進められている。「カーボン太陽電池」「無線送電」「超小型パワーコンディショナー」など研究テーマは多岐にわたるが、共通するのは、「誰でも発電する側になることができる技術」(大石社長)という点だ。

 カーボンに発電機能が備われば、かさばるソーラーパネルを設置しなくても自動車やパソコンで発電でき、無線送電技術で自由に電気を融通し合える。超小型パワコンでソーラーパネルを軽量化することで、重さに耐えられる屋根以外にも設置しやすくなる。

 こうした次世代技術を実用化できるかどうかは分からない。中部大学などと共同で進める、集合住宅のベランダにソーラーパネルを設置する研究では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金を得た。国や自治体の助成事業を増やし、投資リスクを抑える考えだ。

小売りの業績寄与は2017年度以降
●みんな電力の売上高推移

 みんな電力の2016年9月期の売上高は20億円。太陽光発電などの受託運営事業が柱だったが、2017年9月期から小売事業が業績に寄与する。ただ、再生可能エネルギーが売りだけに、足元の燃料安は逆風になる。原油とLNG(液化天然ガス)価格の下落で、火力発電の比率が高い大手電力・ガス会社の価格競争力が高まっているためだ。

 「電気の個人間売買サービスの実現」という目標を達成できるかどうかは、発電所の特徴に価格以上の価値を打ち出せるかにかかっている。

(日経ビジネス2016年11月21日号より転載)