見積もり1時間、半日で出荷

 JMCを頼るのは医療機関ばかりではない。自動車から家電、そして玩具のメーカーまで試作を依頼してくる。取引先の業種は多岐にわたり、社数は500社前後に上る。

 同社が手掛ける試作品の精度が高いのには理由がある。通常、市販の3Dプリンターをそのまま使っても、従前の削り出しに比べて「精度が1桁劣っていた」(渡邊社長)。そこで同社では購入した3Dプリンターを独自に改造、精度を高めて緻密な造形が求められる試作品に対応できるようにした。

 3Dプリンターの活用はコスト削減にもつながる。金属の塊から切削機械で削り出す場合、完成した試作品の体積は元の金属の塊の1割程度。その他の部分は捨ててしまうため、材料費が無駄になっていた。素材を1層ずつ固めて成形していく3Dプリンターなら、材料費の無駄が少ない。これにより、試作のコストは5分の1から10分の1程度に減らせるという。

 顧客企業を引き付ける理由は、納品の早さも寄与している。頭蓋骨のモデルであれば、CT画像を受領してから36時間以内に納品できる。製造業向けの試作品なら、午前中に設計データを受け取れば、最短で午後には試作品を出荷する。

 短納期のポイントは見積もり時の見極めの速さにある。競合の多くは見積もりだけでも2~3日を要するが、JMCは1時間以内に見積もりを提示する。顧客が試作品に求める用途や精度をその場で把握し、どんな種類の3Dプリンターを使ってどう加工するのか判断。素早く試作品製造に取り掛かる。

 実際、JMCの納期はライバル企業に比べ10分の1だ。その結果、同社には依頼が殺到、本社にある15台の3Dプリンターはどれもフル稼働が続いている。取引先からの値下げ要求は強いが、納期の短さは付加価値となっている。2015年12月期決算の税引き利益は1億円を突破した。

利益は1億円を突破
●JMCの税引き利益の推移
利益は1億円を突破<br /><span>●JMCの税引き利益の推移</span>
注:2014年12月期は8カ月の変則決算

 渡邊社長は「目指すのは製造業のコンビニエンスストア。3Dプリンターを年中無休で稼働させ、いつでも必要な試作品を提供できれば、顧客は我々を選んでくれる」と話す。

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