2015年4月にはさいたま市に、とんかつ店「とんかつ かつ元」も出店した。ランチの「ロースかつ定食」は790円、「ヒレかつ定食」は990円と、1000円以内で本格的なとんかつが食べられる店だ。こちらのとんかつ店もちょい飲み需要を取り込むため、「へしこ(北陸名物)」(350円)、「イカ柚子塩辛」(240円)などを提供している。

 こうした店舗で「実験を繰り返して新業態を作り上げていく」(経営企画部の小林俊雄課長代理)という。駅前大衆中華のモデルを確立するため40年にわたり粘り続けた神田会長のDNAが社内に受け継がれている。

【INTERVIEW】
神田正会長に聞く

「駅前マーケット」信じて粘り勝ち
(写真=秋元 忍)

 日高屋が成長を続けていられるのは、決して無理せず、一気に出店しなかったからです。調子に乗って50店、100店と出すと、増収減益に陥る大きな落とし穴がある。外食業界ではこの穴に落ちた企業はいくつもありますから、我々は身の丈に合った30~40店舗しか出してきませんでした。

 ラーメン業界は、一般に個人経営が多く、利益率が低いため家賃の安い所に出店してきた歴史があります。そうした常識に反して駅前に出て行ったのは、時代とともに消えた駅前の屋台のニーズは確実にあると思ったし、ハンバーガーや牛丼の店が出ているのに、なぜ国民食であるラーメンがないのかという疑問からでした。駅前で採算を上げるのは苦労しましたが、マーケットがあると信じて粘ったことが今の成長につながりました。

1968年に初めてラーメン屋を任された(右の写真右)。独立後の74年に大宮の店で(左)

 2011年の東日本大震災の際、日高屋は客数が大きく減らなかった。それは日常食でインフラになったからだろうと思います。それは目に見えない財産で、現場の強さの証しです。

 現場の従業員、特に「フレンド社員」と呼ばれるアルバイトやパートの待遇には力を入れています。2014年からは、年2回のボーナスを支給し始めました。年に数回ホテルなどで行う慰労会「感謝の集い」には、今年はあわせて1000人のフレンド社員を招待しています。この費用は数千万円かかりますが、お客様からお金を頂くという一番大切な仕事をしている人たちを大事にしなければ、この会社はいずれダメになると思っているからです。

 日高屋では、中国の方など2500人もの外国人のフレンド社員が働いています。彼らなくして成長はない。ですから予算を組んで、研修も充実させて底上げしていけたらと思っています。

 会社の時価総額が600億円を超えた今、社員の福利厚生も充実させています。時代遅れかもしれませんが社員旅行を準備しているんですよ。「焼鳥日高」は、日高屋よりも働く上で体の負担が少ないので、シニア社員の活躍の場になればという思いで作りました。

 働いている人がハッピーでないと、お客様もハッピーにならない。会社のために従業員の人生を犠牲にする必要はありません。人生を謳歌して働いてほしいと思っています。(談)

(日経ビジネス2015年11月30日号より転載)