味は「普通」の方ががいい

わが道をゆくユニークな経営戦略
●「日高屋」の好調を支える3つの特徴

 徹底したドミナント(地域集中)出店も特徴だ。本社のある埼玉の大宮からその沿線に沿って拡大していくのだ。外食業界では新宿や渋谷、銀座などの大商圏を優先して出店を進める企業も少なくない。東京の繁華街の次は大阪や名古屋、福岡といった全国の主要都市へと進出していくケースも多い。

 これに対して、日高屋は1駅ずつ店を増やしている。駅の東口と西口など、商圏が異なれば、同じ駅でもそれぞれ出店する。例えば赤羽駅周辺では、日高屋3軒のほかに、来来軒もあり、計4軒が連日にぎわいを見せている。

 約370店の店舗のほとんどが東京、埼玉、千葉、神奈川の一都三県に集中する。残りは栃木や茨城県に数店舗があるだけだ。「首都圏にはまだ出店の余地があり、500~600店はいける。ここを埋めるまではよそにはいかない」と神田会長は話す。

 駅前モデルは多数の来店が大前提のため、来る顧客を選ばない大衆性を維持することが大切だ。だから「味」は追求しすぎない方がいいという姿勢だ。「頻繁に通って食べてもらうには、ちょっと“抜けた”ような普通の味がいい」(神田会長)と考える。同業他社にない味を提供しようとこだわりすぎると、開発にも労力や時間がかかる。とがった味は顧客離れにつながるリスクもある。

 ただ基準以上の品質を保つための仕組みづくりには余念がない。スープや麺、ギョーザなどを加工工場で大量生産して原価を下げる一方で、スープのだしは煮干しなどを煮込み、化学調味料もほとんど入れていない。麺やギョーザ、カット野菜、たれの製造拠点である埼玉県行田市の工場の敷地を、2013年に3200坪から6650坪に広げた。「首都圏600店」を達成すべく、物流の体制も今後強化していく。

焼き鳥など中華の次を模索

 ここ数年の「ちょい飲み」ブームは、先行してアルコール需要を取り込んできた同社には追い風だ。現在の日高屋の売り上げに占めるアルコール比率は15%と、競合する大手定食チェーンなどに比べて高い。それを支えているのは、「冷奴」(200円)や「中華風味付けメンマ」(110円)など、注文しやすいサイズと価格でそろえたメニューだ。

「ちょい飲み」のつまみも安い
●「日高屋」のつまみの例

 日高屋の次に多い、焼き鳥店「焼鳥日高」は、首都圏に19店舗ある。実は最初から焼き鳥業態を作ろうと狙っていたわけではない。駅前の優良物件の話が舞い込んできたが、日高屋だけを出店するには広すぎるため、スペースを日高屋と折半して作った業態だ。19店のなかには、立ち飲みスタイルの店もあるなど、まだ標準の形は定まらず、試行錯誤の状態だという。