菌と戦い、添加物は最小限に

 自動化に加えて、シャトレーゼの強さを支えているのが、保存料などの添加物の使用を最小限に抑える仕組みだ。例えば、同社が86円(税込み)で販売している「無添加うみたて卵のプリン」。原材料は砂糖、卵、牛乳、カラメルシロップだけで、極めてシンプルである。

 通常、加工食品の多くは、賞味期限を少しでも延ばしたり、風味の劣化を防いだりするために、様々な添加物を使用している。砂糖には菌の繁殖を抑える効果があるため、必要以上に砂糖を入れる場合もある。しかし、シャトレーゼは「素材のおいしさを届けたい」「消費者に安全安心な商品を食べてもらいたい」(齊藤社長)という思いから、添加物を減らす努力を続けてきた。

 添加物を減らすためには、菌の繁殖を抑える別の工夫が欠かせない。そこで、シャトレーゼでは菌そのものの数を減らす製造方法を開発してきた。「通常は1g当たり10万以下という一般生菌数の基準(国が定める洋菓子における基準)があるが、我々は社内基準で500と定めている。菌が501個になったら出荷をしません」(齊藤社長)

 菌の数を減らすには、2つの手法がある。一つは製造時に商品と人の接触機会を減らすことだ。「菌は人が触ることで繁殖する」(豊富工場の工場長を務める金丸好光執行役員)。つまり、自動化がカギとなる。例えば、生クリームの製造工程では、材料を機械に投入した後は配管を通って次の生産ラインに届けられる仕組みで、その間に人の手は介在しない。

 もう一つは契約農場から仕入れた原材料を新鮮なうちに使うことだ。約20年間、契約農場の一社として牛乳を卸す新海牧場(長野県南牧村)の新海重人代表は、「出荷前に細菌数を検査するほか、牛が病気を発症しないように餌のやり方を工夫している」と話す。厳格な飼育管理の下で納品された牛乳は、65度の低温で長時間かけて、おいしさを維持しながら殺菌する。

 卵の場合は、採卵から2日以内のものを仕入れて、届いてから2日以内に使用することで新鮮さを保つ。こうした工夫が、高温多湿気候で菌が繁殖しやすいアジアで生菓子を展開するうえでも重要な役割を発揮している。

 もちろん全ての商品の製造ラインが自動化されているわけではない。競争力の源泉となるおいしさにつながらない場合は、あえて自動化をやめることもある。

 最近では、プリンの焼成工程を見直した。これまでは容器に充塡したプリンの原液を、トンネル型のオーブンを使って次の工程に移動させながら焼成していた。それを今は、新たに導入したスチームタイプのオーブンに人の手で入れて焼成している。

 ただし、これも作業工程が確立し、売れ行きが好調であれば、自動化も検討していくことになる。自動化ありきでおいしさを犠牲にすることはないが、おいしさを実現する自動化を追求する道は探り続ける。それが、シャトレーゼの強さだからだ。

 こうした安全な商品へのこだわりが、海を越えて商品を輸送し、高温多湿のアジア圏での事業拡大を支えている。

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