東南アジアを中心に海外展開を加速している
●各国・地域のシャトレーゼの店舗数と進出の誘いが来ている国
<span class="fontSizeL">東南アジアを中心に海外展開を加速している</span><br />●各国・地域のシャトレーゼの店舗数と進出の誘いが来ている国
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 機は熟していた。東南アジアのような暑い地域は酪農にあまり適しておらず、良質な乳製品が少ない。そのため、おいしい生菓子を作るのが難しい。そうした地域で、日本で製造した生菓子を冷凍して輸出すれば、人気が出ると考えた。

 最初にフィリピンを進出先として検討した。ところが、出店先の条件などが合わない。困っていたところに、シンガポールの伊勢丹から「テナントを出さないか」という話が舞い込んできた。この偶然の出合いが、シャトレーゼの海外進出を軌道に乗せた。

 提供された場所はお世辞にもいい立地とは言えなかった。地下2階のスーパーの出口の前で、「たった5坪しかない悪条件の場所だった」(齊藤社長)。それでも、日本の店舗と同じように、新鮮なフルーツを使い、色鮮やかにデコレーションしたケーキやシュークリームなど約40種類の商品を並べたところ、客が殺到した。そこには、かつての日本の郊外にいたような、おいしく、手ごろな値段の洗練された生菓子を食べたいと欲している消費者がいた。

 海外進出からわずか約3年で9カ国50店舗をフランチャイズで展開してきた。シンガポールへの出店には幸運が重なったが、他の地域にまで急速に店舗を拡大できているのは、シャトレーゼの商品がアジアの新興国と相性が良かったからにほかならない。

 まずは「おいしさ」。シンガポールで流通していた生菓子は伝統的なバタークリームを使ったケーキが主流で、口当たりが重く甘さが強い。一方、シャトレーゼの商品は風味や口どけがいい日本産の生クリームを使い、スポンジも軟らかい。シンガポールの加盟店オーナー、ケーレン・クエック氏は「シャトレーゼのケーキは口当たりが軽いから1日に2個は食べられる」と笑う。

 さらに、「品ぞろえの多さ」も地元の消費者を引きつけた。「商品の種類が豊富だから飽きっぽいシンガポール人も何度も店に通ってくれる」(ケーレン氏)。今では240種類ほどに拡大した。

 日本円換算でシュークリームが1個約160円、カットケーキが1切れ約320円からという、日本国内とほぼ同等の「手ごろな価格」も地元の消費者に驚きを与えた。シンガポールで日本食レストランを展開するRE&Sの関篤史氏は「シンガポールは良質な生クリームなどの原材料を確保するのが難しく、ケーキ市場はブルーオーシャンだった。シャトレーゼのようなおいしさと手軽に買える価格を両立させるのは難しく、競合は現れにくいだろう」と指摘する。

 人が押し寄せる様子はSNS(交流サイト)でアジア全体に拡散し、タイやインドネシアなどからも出店の誘いが次々と舞い込んだ。渡邊氏は「シンガポールは他の東南アジア諸国にとってお手本。この国で見たことを周辺国の人はまねをしたがる」と話す。フランチャイズへの加盟希望者は後を絶たず、出店待ちの行列ができている。

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